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防衛白書:中国の政治腐敗や地域格差などを懸念(NK2012/8/1)


中国内政へ異例の言及 防衛白書 日本政府の戸惑い映す

2012/8/1付
日本経済新聞 朝刊
964文字
 2012年版防衛白書が31日の閣議で了承された。日本近海などでの中国軍の動きに警戒感を一段と鮮明にしており、共産党指導部と人民解放軍の力関係が「複雑化している」ことや、政治腐敗・地域格差など中国国内の問題に触れて「政権運営の不安定要因が拡大・多様化の傾向にある」と異例の言及が続いた。軍事などを巡り不透明さが際立つ中国に日本政府の戸惑いがにじむ。
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 森本敏防衛相は31日の記者会見で「東アジア全体で中国がどういう方向に行くのかについて一定の警戒心があるのは事実だ」と述べた。
 中国外務省は日本の防衛白書について「中国は防御的な国防政策を遂行しており、いかなる国家にも脅威にはならない」と反論する談話を発表。「他国の正常な軍の発展を大げさに言う国には別の目的があるに違いない」とも述べ、日本が中国脅威論を利用して軍備増強を図ろうとしていると指摘した。
 中国の12年度の国防予算は約6503億元(約7兆8037億円)で、昨年度の当初予算額から約11.4%増えた。過去24年間では約30倍に膨れあがった。白書は「公表額は実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとの指摘がある」と紹介。自衛隊幹部は「軍事費を伸ばして一体何をやろうとしているのか。意図が分からない」と吐露する。
 今回の白書の特徴は軍事面だけでなく、政権運営の先行きや中国共産党と軍の指導体制に警鐘を鳴らした点だ。中国は今秋の共産党大会で習近平国家副主席による新たな指導体制に変わる予定。白書は「政権運営の不安定要因」として政治腐敗や地域格差、貧富格差、物価上昇、環境汚染、高齢化と様々な問題を列挙し「次期政権を取り巻く環境は楽観的ではない」と懸念を示した。
 軍事力の近代化に伴って軍の任務が多様になり「共産党指導部と人民解放軍との関係が複雑化している」状況を「危機管理上の問題」と表現。防衛省幹部は「党の絶対的指導は揺らいでいる。軍の影響力が相対的に増せば、日本周辺の安全保障環境に直結しかねない」と警戒心を隠さない。
 外交評論家の岡本行夫氏は中国の動向について「最近は沖縄列島を越えての太平洋進出の姿勢も著しい。装備の近代化も急だ」として白書が懸念を示すのは当然だとの見方を示した。そのうえで「中国新指導部が膨張政策に歯止めをかけるか見守りたい」とコメントした。