国際１
ニッポン人気、新興国に広がり
アニメ・漫画、米欧に根付く
【ロサンゼルス＝岡田信行】日本のアニメーションやコミック（漫画）の人気が米欧で根強く続いている。最近は中南米やアジアなど新興国でもファンが増え始めた。アニメを通じて日本語や日本文化に関心をもつ人も少なくない。その「ソフトパワー」を頼り、円高やアジア企業との競争で苦戦を強いられる日本企業が、アニメやコミックを自社商品の販売促進に活用する動きも目立ってきた。
「娘の誕生日のお祝いで来た。本当は東京に行きたかったが、遠いのでここにした」。今年６月末、米ロサンゼルス市内で開かれた北米最大級のアニメの祭典「アニメエキスポ」。イリノイ州から来たという父親が語った。アニメの登場人物のようなセーラー服と紫色の髪をした「コスプレ」姿の少女（16）は「日本のアニメは繊細で格好いい」と話していた。
米で260イベント
米国では、毎年10万人以上を集めるロスでの同エキスポのほか、サンディエゴの「コミコン」など大小様々な催し物が開かれている。日本アニメ関連イベントの専門サイト「アニメコンズ・ドット・コム」によると、今年は全米40州以上で実に260以上の日本アニメ関連のイベントが開かれる予定という。
欧州では期間中にのべ20万人以上を集めるフランスの「ジャパンエキスポ」を筆頭に、各地で日本のポップカルチャーを紹介するイベントが開かれている。日本のコミックもドイツ語やポーランド語などに翻訳されているほか、主題曲のＣＤや登場人物の人形などを売る専門店もある。
アニメや漫画、ゲーム、音楽など、現代日本のポップカルチャーをテーマにした展示会やイベントは、当初は米欧が中心だったが、近年は新興国にも広がりをみせる。中南米事情にも詳しい日本アニメ情報サイト「ツイステッド・マンガ」（米アリゾナ州）によると「最近はメキシコやブラジルなどでも日本アニメの人気が高まり、イベントもある」という。
アジアのポップカルチャーの海外展開といえば、韓国の「韓流」も知られているが、ドラマやポップス音楽が中心の韓流に対し「日本のポップカルチャーは幅が広く深い。現代日本の生活様式や日本人の考え方とも結びついていて興味深い」（米アニメ情報サイト）という声もある。
トヨタも活用
「今回は新車の宣伝ではなく、移動する楽しさを伝えたい」。トヨタ自動車は、今年の米ロスのアニメエキスポに、有力制作会社「スタジオ４℃（ヨンドシイ）」（東京都武蔵野市）と組んで制作した短編アニメ「ＰＥＳ（ペス）」を出品した。
「ＰＥＳ」は、宇宙からやってきた青年ペスから見た地球の物語。作品の中にトヨタ車が出てきたり、登場人物の言動や場面設定に交通マナーや環境技術などの考え方が織り込まれ「トヨタの思想や哲学を知ってほしい」（トヨタモーターセールス＆マーケティングの稲川博氏）という。
「アニメの中に描かれている現代日本の生活様式や言葉、食べ物に関心を持ち、日本ファンになる例がとても多い」と話すのはゴーゴーワールド（東京・新宿）の共同創業者、ダビデ・ロッシ氏。同社は日本語学習や短期留学などを支援。「あこがれの国・日本に行ってみたい」というファンのニーズに応えている。
円高や他のアジア企業の伸長で様々な分野で「メード・イン・ジャパン」がシェアを落とす現実がある。一方で、アニメなどを通じ日本に関心を持つ層が生まれる現実もある。潜在的顧客にいかにアプローチし、市場を開拓するか。日本企業の地道な販売促進活動が世界に広がっている。
＜ＭＥＭＯ＞イベント会場、販促の場に
６月の米ロスでのエキスポには、日本アニメなどの「ソフト力」の強さを商機に結びつけようと多様な業種の企業が参加していた。
事務用品大手の内田洋行は、同社が海外で展開する「マービー」ブランドのマーカーを出展。イラスト好きなアニメファンにブースでお試しで使ってもらい、サンプルを進呈する手法で製品をアピールした。担当者は「初日から大勢のファンが詰めかけるアニメエキスポは製品に触れてもらう絶好の機会」と話す。
「機動戦士ガンダム」のプラモデルを販売したのはバンダイの販売代理店、米ブルーフィン社（カリフォルニア州）。新作の「機動戦士ガンダムＵＣ（ユニコーン）」のプラモデルは30ドルや65ドルと高めの価格だが飛ぶように売れていた。
菓子メーカーも活発だ。「コアラのマーチ」のサンプルを配るロッテのブースの隣は「ポッキー」を配る江崎グリコのブース。少し離れた森永製菓のブースでは「ハイチュウ」と、各社とも看板製品の宣伝に余念がない。担当者は「遠方から来る来場者も多い。学校や職場での口コミに期待している」と話していた。
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