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堀義人:グロービス経営大学院学長(NK2012/8/20)


新興・中小企業

起業の軌跡グロービス経営大学院 堀義人学長 国内最大級のビジネススクール 人材こそ力、即行動

 昨年8月、グロービス経営大学院学長の堀義人はソフトバンク社長の孫正義との公開討論会に臨んだ。東京電力福島第1原子力発電所の事故で「反原発」の機運が高まるなか、堀は3時間半にわたり原発の必要性を訴えた。「自分が正しいと思うことは正しいと言うことが大切」と断言する堀は、これまでもその一本気で道を切り開いてきた。
 経営学修士(MBA)を取得できる国内最大規模のビジネススクールであるグロービス経営大学院のほか、企業向け研修や出版を手がけるグロービス(東京・千代田)、グリーなどを育てたベンチャーキャピタルなど、堀が立ち上げた事業は多岐にわたる。
 だが「もともとは起業に興味はなかった」。京大工学部に入学したが、実験に興味が持てず、就職先も住友商事を選んだ。転機になったのは住商時代の海外留学。配属された重化学プラント部門で手腕を発揮し、社内留学制度で入学したのが米ハーバードビジネススクール(HBS)だった。
 経営者の立場から経営戦略を考える「ケース・メソッド」という授業で鍛えられ、起業志望の仲間にもまれるうちに、自然と起業への関心が高まった。ある時、芝生に座りながら「多くの人材を輩出するHBSのような存在が日本にも必要だ」と思いつき、アイデアを温めながら帰国する。
 住商の事業として、ビジネススクールを立ち上げる道も模索したがかなわず、独立を決意。6年余り勤めた住商を1992年7月に退社した。3時間2万円の貸し教室、生徒数20人からのスタートだった。
 後発でも大手ビジネススクールに育ったのは徹底した顧客本位の戦略にある。授業内容に不満があれば授業料は全額返還する。「社会が求めているのは実践的な学びの場」という思いから、講師は全員が戦略コンサルティング会社や投資銀行などの実務経験者だ。
 授業料は2年間で約280万円。平日の夜や土日がつぶれるが、20代後半から30代前半の会社員を中心に年400人が入学し、在校生は1000人、卒業生は累計500人を超える。
 今春には東日本大震災の被災地復興につなげるため、4校目のビジネススクールを仙台で開校した。堀と親交があるライフネット生命保険副社長の岩瀬大輔は「純粋さと行動力を兼ね備えている点が魅力」と評する。「創立40年の2032年までにアジアでナンバーワンのビジネススクールになる」という次の目標に向け、堀は走り続ける。
=敬称略
(漆間泰志)
 ほり・よしと 1986年(昭61年)京大工卒、住友商事入社。ハーバード大経営大学院修士課程を修了し、92年グロービス設立。茨城県出身。50歳
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