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運動は「少し疲れた」位が目安(NK2012/8/26)


健康

ほどほどに運動、80歳まで元気に
三重大学長・内田淳正氏が提唱 「少し疲れた」位が目安

 寿命を延ばしても健康を維持していなければ意味がない。気遣うことは色々あるが、運動は自分で責任をもって実践できる効果的な方法だ。ただし、毎日適度な量を継続しなければいけない。超高齢社会を幸せに暮らす心構えなどを積極的に発言している内田淳正・三重大学長は「がんばらず、ほどほどに」と、続ける重要性を説いている。
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 内田学長は講演の際、自身で発案した標語「アクティブ80、ポックリ90」をいつも紹介し会場の笑いを誘う。元気で80年の寿命を全うしようとの呼びかけだ。
 日本人の平均寿命(2011年、厚生労働省調べ)は男性79.4歳、女性85.9歳と世界トップクラスだ。しかし自立して制限なく日常生活を送れる「健康寿命」(10年、厚労省試算)は男性70.4歳、女性73.6歳。つまり介護や医療の世話になる期間が男性で9年、女性で約12年と結構長い。これからは要介護期間をできるだけ短くする健康管理が必要になるとみられ、政府も関連施策を打ち出し始めた。
 様々な健康情報があふれるなかで、内田学長は運動を「自分で調整できる最も効果的な方法」と位置付ける。食事の大切さも認めるが、正しい管理にはやや専門的な知識が必要なうえ、お付き合いなど外部からの制約も加わり、難度が高いという。
 では、どんな運動をどの程度こなせばよいのだろうか。
 【ポイント1】同年代のパートナーと一緒に続けられる運動を。
 年齢とともに低下する筋力を保つには、毎日の運動が第一。内田学長は具体例として、ウオーキングや水泳、自転車、ゴルフ、ゲートボールなどをあげた。1人で運動しても面白みが乏しく途中で脱落する確率が高い。「似た年齢の友人をつくりグループでやれば継続しやすくなるはず」(内田学長)
 照れがなければ、社交ダンスを大いに勧める。運動量が比較的高いし、よい緊張感を持って異性と接せられる点が、他の運動にはない優れた特色だという。
 【ポイント2】「少し疲れた」程度で終える。
 内田学長も自宅にウオーキングマシンを置いて利用している。歩き始めの5~10分間はちょっとおっくうに感じても、40~50分たつと快い気分になる。鎮静作用のある神経伝達物質「ベータエンドルフィン」が脳の中で作られるためと考えられている。快適に感じてさらに歩き続けると痛みが出てきたり疲労が残ったりし、翌日に運動する意欲をそいで逆効果になる。
 それを防ぐ目安が「少し疲れた」という感覚だ。主観的ではっきりしない場合は心拍数を参考にする方法があるという。最大心拍数の220から年齢を引いた数字の7~8割の値が運動の止めごろ。50歳なら119~136、70歳なら105~120になる。135を超える運動はできるだけ避けた方がよいようだ。
 運動の継続が大切と唱えられる科学的な調査も出てきた。代表は、筑波大学と茨城県大洋村(現在は鉾田市)が96年から共同で繰り広げた健康増進プログラムの成果だ。
 運動習慣の無い人たちと健康増進プログラムに参加した人たちで、2年間の1人当たりの医療費増加額を比べたところ、運動習慣の無い人たちが9万5614円の増加だったのに対し、プログラム参加者のグループは2万3449円にとどまった。転んでけがをする件数が大幅に減るなど、高齢者の健康を維持できるようになった効果が大きい。それが7万円を超す医療費削減につながった。
 内田学長もこのデータを引用し「努力している高齢者を奨励する仕組みを導入すれば、全国に広げられる。国や自治体は、税金を割り引くとか年金を割り増しにするなどの誘導策を考えてほしい」と提案する。
 現在の健康増進に関する制度は、検査値など数値に依存する傾向が強い。内田学長は「飲まず食わずで辛抱を強いるやり方」と不満を漏らす。個人個人の体調に合わせたほどよい健康法の浸透を願っている。
 さらに内田学長は運動の継続性とともに心構えの大切さを唱える。好奇心を抱き、家族や仲間を大事にすることは重要な条件。また男性の場合は色気を、女性はおしゃれを忘れないようにする人が健康で長生きすると、持論を説いている。
(編集委員 永田好生)
 
 うちだ・あつまさ 1971年大阪大医卒。防衛医大講師、阪大医学部助教授などを経て96年三重大医学部教授。2009年から現職。専門は骨軟部腫瘍、関節外科、生体材料。三重大のホームページでブログ「学長通信」を連載している。徳島県出身、65歳。
ひとくちガイド
《本》
◇病気になりにくい食習慣や運動法などをやさしく解説する「ほどほど養生訓」(岡田正彦著、日本評論社)
◇無理せずに体づくりを目指す「医師がすすめる50歳からの肉体改造」(川村昌嗣著、幻冬舎ルネッサンス)
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内田淳正、三重大学