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山田昌弘:最大の親孝行は自立(NK2011/4/20)


(いつまでも親子 識者に聞く)最大の親孝行は自立 中央大学教授 山田昌弘氏

2011/4/20付
日本経済新聞 夕刊
1019文字
 少子高齢化が急ピッチで進む平成日本。親子のあり方も変わらざるを得ない。家族問題に詳しい山田昌弘・中央大学教授に聞いた。
 ――これから親子関係はどうなるのか。
 「日本では親子関係が中途半端になってきた。昔の日本は直系家族3世代の同居が原則。欧米は成人になったら自立して生活するのが当たり前だった。今の日本はどちらでもない。お互いに利益があれば同居し、そうでなければ別々に暮らすようになっている」
 「親も子も生活に余裕があれば、選択肢は豊富で良い関係を築ける。そうでない場合は問題が多い。将来は欧米のように親は親、子は子で経済的に独立しながら、情緒的な関係を結ぶことが理想。日本がその方向に行くかは断定できない」
 ――問題のある親子関係とは。
 「日本では高齢の親と未婚の子が同居する例が急速に増えている。しかも同居する子の経済力は低下している。かつては子のほうが収入が多く、収入の少ない親を養う例が一般的だった。だが、今は逆に裕福な親が無職やフリーターの未婚の子と同居、高齢の親が年金で養うケースもある。もっとも、親が貧しく子が豊かというケースもまだ多く、多様化が進み、格差が拡大している」
 ――収入の少ない子どもは親孝行どころではない。どう親と接したらいいか。
 「親孝行は高度成長のたまもの。子どもが親より豊かになるのが当たり前の社会が生まれ、自分のために尽くしてくれた親に報いようとの意識が高まった。親の年金に頼る子どもは感謝を示したくても、お金で返すことはできない。最大の親孝行は自立することだ」
 「欧米では親の役目は子どもを自立させることだが、日本の親は安全な場所に置き、リスクを避けることばかり考えている。今は親が子どもの就活や婚活にも精を出している。だが、いつまでも自立できないと、行き着く果ては高齢者の所在不明問題ということになりかねない」
 ――子どもの自立が親子関係のカギを握るのか。
 「自立には若者の雇用環境を改善することも必要。米国の自己責任、欧州の社会責任に対し、日本は家族が責任を負わされる社会。格差が広がる中で家族の負担を減らし、弱者に対しもっと社会が責任を負う仕組みをつくるべきだ」
 「このままだと家族の二極化が進む。ある程度経済力がある人は結婚し豊かな中で、子どもを産み育てる。だが、それができない人がどんどん増える。普通に家族を形成する人とそうでない人に分かれていくのは問題だ」
(聞き手は編集委員 藤巻秀樹)
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