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デジタル産業革命で1人製造業が(NK2012/11/14)
1人で起こせる製造業 デジタル産業革命(真相深層)
米ワイアード誌編集長 クリス・アンダーソン氏
インターネットがもたらす経済社会の変革を予言したベストセラー「ロングテール」「フリー」の著者、クリス・アンダーソン米ワイアード誌編集長が「新産業革命」を提唱している。今度はネットが「ものづくり」を変えるという。米国で始まった新たなムーブメントの正体を聞いた。
■「民主化」起こる
――「新たなデジタル革命」は、今までと何が違うのか。
「これまでの革命はパソコンやスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)のスクリーン上、つまり2次元の世界で進んだ。これから始まる革命は3次元、すなわち『ものづくり』を変える」
――具体的には。
「インターネットにつながった3D(3次元)プリンターやレーザーカッターといった卓上サイズのデジタル工作機械を使って、これまで大企業にしかできなかった『ものづくり』が、一般の人々にもできるようになった。装置がなくても製造を請け負う工作スペースにネットで設計図を送れば、自分のデザインを形にしてくれる」
「2次元のデジタル革命では、それまで表現手段を持たなかった一般の人々がメディア企業や映画会社と同じように、自分たちが作ったコンテンツやソフトウエアを市場に届けられるようになった。それと同じ『民主化』が製造業でも起きる。眠っていた膨大な数のアイデアや情熱や創造性が流れ込み、新しい市場が生まれる。アマチュアが明日の市場をつくる。だから新産業革命なのだ」
「彼らはネット上でコミュニティーをつくり、アイデアを共有する。みんながアイデアを出し合ってどんどん改良していく。ネットで公開したアイデアに賛同した人たちが開発費用を出資するクラウドファンディングという仕組みもある。こうした動きを『メイカー ムーブメント(製造業革命)』と呼んでいる」
――担い手は誰か。
「私が立ち上げた無人飛行機の製造キットを作る会社では銀行、広告会社、アップル、グーグルの社員が働いている。私は昼間、雑誌を編集し、夜は無人飛行機を設計していた。最初は充足感を得るための趣味だったが、情熱が募り、それが本業になった。人が持つ才能は1つではない。製造業革命は無数の才能のプールになる」
■大量生産と共存
――アマチュアがプロを駆逐するのか。
「そうではない。我々はユーチューブでアマチュアが作った動画を楽しむようになったが、ハリウッドの映画はなくならない。映画だけでは飽き足らない利用者のニーズをアマチュアの動画が埋めている。ビー玉が入ったコップの隙間を砂粒が埋めるイメージだ」
――大量生産のビジネスモデルは衰退していくのか。
「製造業革命はマス(大量生産)を破壊するのではなく、補完する。クラウドファンディングで1000万ドル(約8億円)の事業費を集めたペブル・テクノロジー社が作った『スマート腕時計』は、米アップルのiPhone(アイフォーン)やアンドロイド携帯電話のアクセサリーとして使う製品だ。マスとマイクロは共存できる」
――アイデアがあっても幸運がないと製造業は起こせなかった。
「私の祖父は画期的なスプリンクラーを発明したが、生産手段を持たなかったので企業にアイデアを売るしかなかった。しかし、今や企業が独占してきた生産手段が一般の人々に開放された。起業家になれる発明家は1000人に1人だったが、100人に1人、もしかしたら10人に1人になるかもしれない」
(聞き手は編集委員 大西康之)
Chris Anderson インターネット小売りでは、買い手が1人しかいない製品を1万種類売れば、1万人が買うヒット商品と同じ売り上げになるという「ロングテール」理論などを提唱。このほど「製造業革命」を取り上げた「MAKERS(メイカーズ)」を出版した。起業した無人飛行機の製造キット会社の経営に専念するため、米ワイアード誌編集長を辞任すると発表した。英ロンドン生まれ、51歳
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