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宮内義彦

政治経済、国際情勢

訪日外国人の経済効果 「2020年には4.2兆円」
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観光は未来の大産業  (宮内義彦氏の経営者ブログ)
(1/2ページ)2015/1/30 7:00[有料会員限定]
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 先日、日本政府観光局は2014年に日本を訪れた外国人の数が前の年より29%多い1341万4000人だったと発表しました。日本で使ったお金も2兆305億円と過去最高。政府は「2020年に2000万人の目標が見えてきた」と自信を強めています。

 大変すばらしいことですが、思うに、これまで訪日旅行客が少なかったこと自体がおかしなことだったのではないでしょうか。四季折々の風景、奥深い文化、歴史的建造物や美術品の数々、おいしい食事。なにより「おもてなし」の言葉に代表される日本人のホスピタリティーの高さ。どれをとっても世界最高レベルで、これらの観光資源をもってすれば、黙っていても訪日旅行客があふれかえるはずです。

宮内義彦(みやうち・よしひこ)1935年神戸市生まれ。米国に渡って学んだリースを手始めに、不動産、生命保険、銀行などと事業領域を広げてきた金融サービス界の重鎮。最高経営責任者の在任期間は30年を超え、企業経営に関する著書も複数ある。語り口はソフトながら、世の中の動きを分析する視点は鋭く、時に厳しい。マクロ経済についての関心も高く、規制改革にも長く取り組む。野球好きで知られ、球団オーナーの顔も持つ。現在は「シニア・チェアマン」として経営への助言を続けている
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宮内義彦(みやうち・よしひこ)1935年神戸市生まれ。米国に渡って学んだリースを手始めに、不動産、生命保険、銀行などと事業領域を広げてきた金融サービス界の重鎮。最高経営責任者の在任期間は30年を超え、企業経営に関する著書も複数ある。語り口はソフトながら、世の中の動きを分析する視点は鋭く、時に厳しい。マクロ経済についての関心も高く、規制改革にも長く取り組む。野球好きで知られ、球団オーナーの顔も持つ。現在は「シニア・チェアマン」として経営への助言を続けている
 2014年度の観光白書によりますと、外国人旅行者受け入れ数ランキングのトップはフランスで8302万人でした。スペインは5770万人で4位。日本はマレーシアや香港、韓国などに大きく水をあけられ33位。意識過剰といわれるとそれまでですが、我が国の観光資源がこれらの国々・地域に劣っているとはとても思えません。

 では、何が問題だったのでしょうか。関係者からは「積極的に日本の情報を発信してこなかった」との反省の弁がよく聞かれます。確かにそれも一因なのでしょうが、良いものは口コミで広がっていきますから、長年にわたる不振の理由がPR不足だけとは言えません。

 地理的に極東であることも、よく指摘されます。世界の国々から最も離れた地域と感じられる響きです。しかし同じような条件の国はたくさんあります。南米、アフリカ、オセアニア等々があります。世界は狭くなりました。アジアから日本を見ると、極東ではなくお隣です。格安航空会社(LCC)等が普及しています。交通費も格段に安くなってきています。もはや地域的な不利は解消しつつあるのみならず、日本は大人口を抱えるアジアの一角なのです。

 もっと大きな理由は、鎖国的ともいえる規制の数々、縦割り行政の弊害でしょう。外国人へのビザ発給について、法務省などは長年、「犯罪が増える」として消極的な姿勢を取り続けてきました。日本に興味がある人々を門前払いするわけですから観光客が増えないのは当たり前。私どもと提携しているフィリピンの財閥のご家族が日本へ観光に来た際、入国時にご夫人たちが不快な扱いを受けたと不満を聞かされたこともあります。

 今はマレーシアやタイなどからのビザなし訪問を認め、フィリピンやベトナムについても大幅緩和しましたが、これらは安倍政権になってからの取り組み、ほんの最近のことです。羽田空港の国際線が便利と思える程度に増えたのも、ここ直近の話ですし、使いにくい免税の仕組みにしても簡素化の動きが本格化したのは去年からです。ようやく世界の普通の国の仲間入りをし始めたのです。


 地方自治体だって、ごく最近まで外国人旅客の取り込みを真剣に考えてこなかったのではないでしょうか。観光パンフレットがそれを証明しています。自分の県内の特産品や観光地の説明だけで、県境の道を一本はさんだ先にある隣の県の温泉地については全く地図も説明もないのです。また、県庁の縦割り行政が見事に市町村に及び、例えば観光と産業開発の連帯はおろか隣の自治体との連携なども見られません。

 観光客は点で動くのではなく、線で動くもの。日本人向けの海外団体旅行のパンフレットがそれを見事に証明しています。欧州ならば、有名美術館を見て、ロマンチック街道を通って、古城を訪れて、ライン川を下って……。旅行会社が違っても中身は一緒。マンネリということなかれ、それだけ楽しくて人気を集める完璧なルートがあるということです。こうした「ゴールデンルート」を提案する取り組みが行政も民間も足りないのではないでしょうか。

 例えば、大人気となっているJR九州の豪華寝台列車「ななつ星in九州」。一部でも構いませんので、この「in九州」を外して北海道まで走らせてもらえないでしょうか。日本版オリエント急行です。点ではなく、線を楽しむ観光ルートがたくさんできます。北海道までが無理なら例えばJR西日本と提携することで萩、松江、鳥取砂丘、宮島、瀬戸内、広島、倉敷、姫路、神戸などたくさんの点を集めることが出来、その魅力は倍加するはずです。

 訪日旅行客を増やす重要性は、観光庁や自治体の観光担当部署、旅行関係者にとってだけの話ではありません。みなさん、所詮はレジャー、娯楽の類だと他の産業に比べて低く見てはいないでしょうか。

 ちょっと乱暴な計算をしてみましょう。年間の訪日旅行客が3000万人になったとすると、1カ月あたり250万人。1日あたりは8万人強ですが、観光ですので少なくとも平均3日滞在すると仮定すると、日本に24万~25万人の観光客が常時いるわけです。

 一方、日本の人口は毎年20万~30万人のペースで減っています。お金を稼ぐ人がどんどん減っている。国力が衰えているとの見方もできます。しかし「人口減で失われる稼ぐ力」<「訪日旅客が使うお金」であれば、なんと日本の富は増えていくのです。つまり、一人でも多く来日してもらい、お金を使ってもらうことが、経済面では人口減を補う効果を生むのです。

 私の勝手な未来予測では世界中の人の移動が激増する、これが未来のメガトレンドの一つだと考えます。人の移動のうち、最もダイナミックなのは観光客です。これをどう取り込むかについて国を挙げて対応する。そして日本にはこれまで無かった本当の一大産業「観光業」をつくる。これこそ成長戦略の柱の一つになり得るはずです。

 観光は日本の国力を維持するための生命線、一大産業との意識を我々は持ったほうがいい。政府の2000万人の目標は低すぎます。2020年に最低3000万人。スペイン並みの5000万人を目指して、みんなが知恵を絞りましょう。

宮内義彦 オリックス シニア・チェアマンのブログは隔週金曜日に掲載します。

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読者からのコメント
40歳代男性
ビザ発給に触れておられましたが、それこそが大変示唆に富んでいると思います。いまだに日本の入管法は、相手国からの邦人へのビザ要件に比べてアンフェアだと言えるでしょう。しかし、足元へ目を向けると少子高齢化社会が進んでくると将来労働力を輸入する必要が出てくるのではないでしょうか。犯罪予防にとらわれすぎてアンバランスなビザ要件を続けるといずれ誰からも見向きもされなくなります。
小野芳則さん、30歳代男性
世界各国は、観光を基盤産業として位置付け育成しています。日本も、小泉政権時にようやく取り組み始めしました。産業の空洞化が進む昨今、日本も国策として、本腰を入れるべきだと思います。予算のバラマキ型取り組みではなく、国は後方支援し、民間主導で実施すべきです。宮内さんもおっしゃっていますが、各民間企業・各自治体が連携し線(ライン)での取組みが重要だと思います。今後は、既存商品を生産する社会から、産業を創造、創出することに注力する社会になるべきだと思います。今まで、空白だった、この分野は、経済面、雇用面、そして地方再生に大きな可能性を秘めています。
闘魂さん、60歳代男性
観光の重要性はご指摘の通りです。 ただ、多くの方々も同様の論調で、如何にして外国からの訪問客を増やすか、そしてその為に何が必要かと展開するのですが、その前に変えるべきことがある気がします。 日本人が国内の観光地が充実するように余暇を楽しむような生活していないのです。ここが変化しないと、外国人観光客人気だけを当てにして、頑張れと言うのは可哀想です。 最近いくつかの観光地を訪ねてみるのですが、解説資料が日本語でも充実していないのが実態です。団体が大型バスで来て20分-30分のお急ぎコースで見学、と言うスタイルが定着していては観光立国にほど遠いです。
嘆きの60歳さん、60歳代男性
明治以降国際社会=世界クラブに入っていなかった日本がやっとその入り口に立ったと言う所でしょうか。東京オリンピックの誘致に成功したことに始まり周りの環境が良くなってきた事、その中には円安の影響も大きなファクターでしょう、自助努力をしてきた事も認められます。もっと大きいのは中国、韓国を始めとする東南アジアの諸国の国力が上がり、生活も向上し若い人でも日本に旅行で来れると言う彼らの努力もあるのです。観光はサービス業で恋愛と同じ、幾ら此方がアッピールしても相手に好きと言われなければ結果はゼロ、やっと普通の国になった日本もいいかなと思われつつあると言う状況です。最終決定権は相手にあり。1歩1歩努力をして世界クラブの一員なる様成果を焦って得ようとしない事です、時間が必要です。性急に結果を追いかけない。ゆとりを持って、待てば結果はついてくる。



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