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採石場跡地を観光に "地底湖"で探検も。宇都宮市

【1-1】(下野新聞社、文・石幡愛、写真・山口達也)を引用編集

メディアにお披露目された「地底湖クルージング」。
大谷地区を舞台に新たなツアーが始まる

 坑道を少し下るだけで周囲は完全な闇に変わった。
ライトをともす先に"地底湖"が広がっている。
大量の地下水がたまってできたもので、広さは2千平方メートル、水深は深いところで4メートルある。

 宇都宮市の 大谷 (おおや) 地区に残る採石場の跡地だ。
9千平方メートルの広大な地下空間は、石を切り出した人工的な直線に囲まれ、まるで巨大遺跡の中に立っているようだ。

この廃坑を利用したニューツーリズム計画が進行している。

 大谷地区はかつて石材業で栄えた。
1975年ごろの最盛期は採掘量80万トン超。
生産される「 大谷石 (おおやいし) 」は加工しやすく耐火性に優れている。
関東大震災で倒壊、焼失を免れた帝国ホテルにも使われていたとの話も地元で語り継がれてきた。

 ところが、需要の変化で採掘量は年々減少。
近年は2万トンに満たない。
そこに89年の大陥没事故が追い打ちを掛けた。
地下空間が崩落し地表が広範囲にわたって陥没した。
残された250カ所ほどの廃坑は一転して厄介者になった。

 この負の遺産を「資源に」と発想を変えた。
「廃坑に新たな価値を」。
建築設計などを手掛ける 塩田大成 (しおだ・たいせい) さん(38)は、飲食やレジャー関連業者に協力を呼び掛けた。

地底湖をゴムボートで探検するクルージングを軸に、周辺の自然環境も活用した体験型旅行商品の開発を進めている。

 行政が設置した90カ所の地震計が地盤の異変を監視し、落盤などの兆候を予測するため、安全性も確保できるという。

 目指すのは「選ばれる地域づくり」。

塩田さんは「訪れる人がいれば、新たな雇用が生まれ、さらに新たな店や仕事ができる」と力を込める。
新しい大谷が産声を上げようとしている。

*大谷ブランドのイチゴ。野菜の貯蔵庫にも。

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