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緒方貞子。日本人だけが危ないところに行かない時代は、終わった。日経


これからの世界   外交力、和平仲介で示せ  緒方貞子日経2015/08/13。引用編集

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要点(By 桑原政則)
  • 日本外交は、対米、対中以外の国際的な広い視野に立って動きなさい。
  • 米国は自分の世界戦略で動く。1970年代初めに突然、中国に接近したのも、対ソ戦略だった。
  • かつて貧しかった国々が豊かになった分、宗教やイデオロギーの対立が噴き出し、国同士の衝突もふえている。中東やアフリカがそうだ。
  • 日本には、海外の紛争地で人々を守ってあげるという、警察的な役割は大切だ。
  • 日本人だけが危ないところに行かず、自分たちだけの幸せを守っていけるような時代は、もう終わった。
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 ――ご自身が17歳のとき、敗戦を迎えました。それから70年、日本の外交の歩みをどう振り返りますか。

 「日本外交はもう少し、国際的な広い視野に立って進めるべきだった。日米関係はもちろん基軸だが、米国は自分の世界戦略で動く。1970年代初めに突然、中国に接近したのも、対ソ戦略だった。日本は世界を見渡すというより、対米や対中など二国間の視点で考え、米国の動きを追いかけがちだ」

ODAだけでは
 ――その中国との関係でも日本は戦後、試行錯誤を繰り返してきました。領土や歴史問題の対立が深まり、関係は一向に安定しません。

 「経済的には中国との協力なしにはやっていけない。そのことは政府より、むしろ経済界がよく分かっている。日本側の一部の層に安易なナショナリズムがある一方、中国側の一部にも傲慢な傾向がみられる。どうすればよいか、答えは簡単に見つからない。だが、日米関係を強めれば、日中関係も安定するというほど状況は単純ではない」

 ――日本は長年、経済援助を外交の柱にしてきましたが、世界一だった政府開発援助(ODA)の規模は大きく減りました。どこに外交力を求めるべきでしょう。

 「かつて貧しかった国々が豊かになった分、宗教やイデオロギーの対立が噴き出し、国同士の衝突もふえている。中東やアフリカがそうだ。ODAの額を再び大きく増やすだけでは日本の国際貢献は足りない」

 ――安倍政権は自衛隊の海外での活動を広げようとしています。国会で安全保障関連法案が審議されていますが、国際貢献のあり方としてどう考えますか。

 「軍事力を使って、他国の紛争に介入することはやるべきではないし、やれることでもない。日本にそんな人的な資源があるとも思えない。ただ、海外の紛争地で人々を守ってあげるという、警察的な役割は大切だ。自衛隊が海外で治安維持の活動を展開することもひとつの方法だと思う」

 ――治安維持のため、自衛隊が海外での活動を増やすなら賛成だ、と。

 「国際的に期待される治安維持の役割があるときには、自衛隊も出ていけばよい。その大前提は、必要な訓練がきちんとされていて、国際的な活動の一部として出て行くことだ。ただ、それを国際貢献の看板とするには無理がある。自衛隊を出すにしても物理的な限界がある。日本はもっと紛争国間の調停に入り、和平を仲介する役割をめざすべきだ。それには国際政治をよく理解し、交渉力がある人材を育てなければならない

安保法案説明を
 ――世論調査では安全保障関連法案への反対が多いです。押し切ってでも、成立させるべきだと思いますか。

 「法案によって何ができるようになるのか、どのように世界に役立てるのか。その見取り図を、政府がもっとしっかり、出せるようにならなければならない。そこをはっきりさせないと、世論の理解は得られない。以前私は、日本だけが『繁栄の孤島』となることはできないと言ったことがあるが、日本人だけが危ないところに行かず、自分たちだけの幸せを守っていけるような時代は、もう終わった

(聞き手は編集委員 秋田浩之)

【※】緒方貞子(おがた・さだこ) 
1990年代を通じ、国連難民高等弁務官として世界の紛争地に入り、難民の救済に取り組む。2003年~12年、国際協力機構(JICA)理事長。87歳

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