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イチゴ煮、地元食材で健在 青森県・階上町(はしかみちょう)

7-1】(デーリー東北新聞社、文・川守田将和、写真・大粒来仁)引用編集
 「初めて食べたお客さんに『こんなにおいしいものがあるんだ』って感激する人もいるの」と話す階上町(はしかみちょう)の平戸タイさん。

 青森、岩手両県境の太平洋沿岸に伝わる郷土料理「イチゴ煮」。
ウニとアワビをふんだんに使ったうしお汁で、お盆や年末年始、お祝い事などのハレの日には欠かせないごちそうだ。

 「イチゴ煮の里」を掲げる青森県階上町(はしかみちょう)の民宿食堂「はまゆう」では、1977年の創業時から、看板メニューとして地元産の食材を使ったイチゴ煮を提供している。
リピーターも多く、20年来通う客もいるという。
 切り盛りするおかみの平戸(ひらと)タイさん(69)は「震災後、常連さんたちが心配してくれて、店をやってて良かったと思いましたね」と目を細める。

 東日本大震災の津波で、階上町では漁船の約半数が流失し、ウニ、アワビの種苗生産施設を含む漁業関連施設の多くが被害に遭った。
イチゴ煮の主役であるウニとアワビも浜に打ち上げられたり、沖合に流されたりした。
 漁港のすぐそばにある店には数メートル手前まで津波が押し寄せた。
幸い、店舗に大きな被害はなく、落ち着きを取り戻した約2週間後に営業を再開したが、三陸沿岸の被害の深刻さから、被災したと思われて客足が途絶えた。
ウニの仕入れ値は例年の倍に跳ね上がり、苦しい経営を強いられた。

 それでも「看板料理は外せないし、この町で店をやっている以上、守っていかなきゃ」と、値段を据え置いたままメニューを提供し続けてきた。
 現在、食堂は冬季休業中だが、民宿には岩手県沿岸部で進む復旧・復興工事の関係者が宿泊し、忙しい日々を送る平戸さん。
「一日も早い復旧に向け、頑張ってほしい」との思いを強める。

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 「イチゴ煮」はウニを野イチゴに見立てて、名付けられたと伝えられる。
ウニとアワビから染み出たうま味を、塩と酒で整える昔ながらの作り方を守り続ける平戸さんの一杯は、シンプルながらも、磯の風味を最大限に引き出している。

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