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石原進:観光立国への課題。プロモーションを一括し、旅行会社との窓口も一本化。

「訪日客4000万人」観光立国への課題
2016/8/25nk石原進 抜粋要約

 今年は年間2000万人超えが確実の訪日外国人客。だが、最近は中国人の「爆買い」が一服したほか、一部でトラブルも増えてきた。政府は東京五輪が開かれる2020年に倍の4000万人達成を掲げる。観光立国実現への課題は何か。

■地域ブランド確立急げ 九州観光推進機構会長 石原進氏


 九州の訪日外国人数は2015年で283万人に達した。前年比で7割増え、5年前の3倍近くに膨らんだ。

九州観光推進機構会長 石原進氏
九州観光推進機構会長 石原進氏
 原動力は全体の4割強を占める韓国人客だ。最大の魅力は近さだろう。東京などを訪ねるより交通費も1万円以上安く、日帰り客も多い。

 地の利だけではない。九州の工夫もある。その一つは旅行しやすい環境の整備だ。

 訪日客は鉄道好きが多い。九州旅客鉄道(JR九州)は訪日客限定の乗り放題切符「JR九州レールパス」を出した。有効に使えばかなり安く、JR九州の観光列車にも乗れる。博多と由布院を結ぶ「ゆふいんの森」は日本人が席を取るのが難しいほどだ。

 訪日客に広めようと、格安航空会社の香港エクスプレス航空の機内で乗り放題切符を販売すると、1回で40~50枚売れるようになった。

 訪日客拡大には地域のブランドイメージ確立が必要だ。九州は温泉に目をつけた。7県全部にあり、日本全体の3分の1の源泉があるという。もちろん、温泉だけでは呼び込めない。温泉に食や自然、熊本城のような文化など各県の特徴を加え、複数の魅力を訴えることが大事だ。九州では県ごとにバラバラだったプロモーションを一括し、旅行会社との窓口も一本化した。

 今後の注目はクルーズ船の中国人客だ。大都市では「爆買い」が一服したが、九州はもともと薬や化粧品などが売れる。船は重量制限もない。九州をクルーズ船で旅行するスタイルが定着しつつあり、今後も好調が続くだろう。

 訪日客拡大に大事なのはリピーターを増やすこと。どの国や地域からどの空港経由で、どのぐらい来ているか把握することが大切だ。今はそのようなデータはないが、パスポートや出入国記録を活用すれば分かるはず。有効な誘致策を海外に広げるためにも政府に調査をお願いしたい。

 旅行業界の生産性の向上も重要だ。日本の旅行業は裾野は広いが1人当たりの所得は低い。訪日客の消費額や単価を増やす必要がある。有効なのはカジノなどで構成する統合型リゾート(IR)の開発だ。九州ではエイチ・アイ・エス傘下のハウステンボス(長崎県佐世保市)が意欲的。法改正も必要だろう。

(聞き手は新井惇太郎)

 いしはら・すすむ 東大法卒、旧国鉄入社。02年九州旅客鉄道社長、14年から相談役。16年6月にNHKの経営委員長に就任した。71歳。

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