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鯉の滝登り。登竜門

鯉の滝登り 躍進への願い
2017/4/30付nkを抜粋編集
ギャラリー久留米

 川をさかのぼってきた鯉が滝に出あうと、激流に立ち向かって跳ね、滝の上に上がろうとする。その困難に立ち向かう勇ましい姿は古くから縁起のいい絵柄とされ、絵皿などの陶磁器とか、床の間にかける軸に好んで使われた。

 中華文明の中心地だった黄河中流域には淡水魚しかいないので、中国では鯉が珍重された。中華料理の宴席で鯉の丸揚げに甘酢をかけたものがよく登場するのはそのためで、それ以外にも中国では鯉はめでたい魚とされてきた。

 中でも代表的な話が「登龍門」である。黄河上流にある三門峡は昔から黄河最大の難所で、船ですら難渋する激流だから、ほとんどの魚はのぼれなかった。しかし鯉だけはそれができた。こうしてこの滝を越えた鯉はそのことで神通力を獲得し、やがて龍に変身するという伝説ができ、その峡谷はやがて「龍門」とよばれるようになった。

 鯉が「龍門を登」って龍になることから、非常な難関を突破して大きな躍進の機会を得ることを「登龍門」という。日本で五月の節句に空を舞う鯉のぼりには、男の子がすくすくと成長して立派に「龍門を登れる」ようにとの願いがこめられているのだが、ただ最近のマンションのベランダ用に作られた小さな鯉のぼりでは、あまり大きな龍になれそうにないのが、ちょっとかわいそうだ。(阿辻哲次  漢字学者)

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