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「暑さ日本一は川越」 原因は?

「暑さ日本一は川越」 熊谷や多治見とココが違う 
首都大チームが観測 東京のヒートアイランド影響
2017/7/23付  日経を抜粋編集

【出所】日経
1  ヒートアイランドの熱風をもろに受ける
2  海の冷風が届かない


 毎年猛暑に襲われる日本では、どこが最も暑いのかを巡ってホットな争いが繰り広げられるほどだ。首都大学東京の研究チームの観測から、埼玉県川越市が日本一暑い可能性があることが分かった。東京で起きている都市部の気温が周囲より高くなる「ヒートアイランド現象」が特別な暑さをもたらしているという。


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 「小江戸」と呼ばれる川越の市街地から北東に約5キロ離れた田んぼの真ん中にある川越市立芳野小学校(鴨田331)。「川越の中でもこの辺りの気温が一番高い」と語るのは研究チームを率いる三上岳彦同大名誉教授だ。教え子の大和広明・長野県環境保全研究所研究員とともに、7月上旬に現地を訪ねた。当日は快晴で気温36度。太陽がじりじりと照りつけ、汗がしたたり落ちた。

 チームは2006年、ボランティアの助けを借り、首都圏に独自の観測網「広域メトロス」を作った。小学校の百葉箱などに気温の自動測定器を置き、10分ごとの測定データを収集・分析する。観測点は約200カ所。気象庁が同地域で展開する気象観測システム「アメダス」より1桁多い。

 約10年に及ぶ研究の結果、観測範囲内で日本有数の暑い都市として知られる同県熊谷市よりも、川越の方が典型的な夏日に1~2度気温が高いことを突き止め、今年5月末に英気象学会誌に発表した。三上名誉教授は「測器は厳密に検定しており、精度は十分と考える」と胸を張る。

 気象庁は1974年、気温や雨量を自動観測するアメダスの運用を始めた。現在はほぼ21キロ間隔で日本列島を網羅する高密度の観測網だ。しかし残念なことに川越市にはアメダスがない。近隣の熊谷やさいたま市から10キロ以上離れた空白地帯になっている。

 日本の過去の最高気温トップは13年8月12日の高知県四万十市江川崎の41.0度だ。2位は07年8月16日の40.9度。熊谷と岐阜県多治見市で観測された。この日、広域メトロスでは、川越は41.6度だったという。三上名誉教授は「気象庁の観測点があれば、日本最高になっていたはずだ」と振り返る。

 ちなみに、アメダスがない市区町村でも気温の予報は出ている。これは気象庁の数値予報と呼ばれるシミュレーション結果から推定される情報だ。ただ予報はしても観測記録がないので、「宿題の答え合わせをしていない」状況がずっと続いている。

 研究チームは川越が暑くなる科学的な理由も考察した。主な要因は2つ。1つは東京湾や相模湾を北上する海風が東京のヒートアイランドに遮られ、約40キロ風下の川越に届く時刻が近隣よりも遅くなることだ。大和研究員は「1日のうち日射が最も厳しい午後1~3時ごろまで海風が来ないため、周辺より気温が上がる」と話す。

 もう1つは、ヒートアイランドで生じた上昇気流が下降して拡散するのが川越付近ということだ。気流は下降する際に加熱される性質があり、地上の気温上昇をもたらす。東京から約60キロ離れた熊谷には下降流が届かず、最高気温が川越に及ばないという。

 熊谷や群馬県館林市、多治見市などは主に、山地を越えてくる風が下降する際に気温が上がるフェーン現象の影響で暑くなる。一方、東京のヒートアイランドが川越に及ぼす影響の方が大きいというのが研究チームの見立てだ。それほど東京のビル街や交通が生み出す熱量は大きいということになる。

 広域メトロスの前身である「メトロス」は03年度に始まった。当時の石原慎太郎都知事が、都の環境政策でディーゼル粉じんの抑制と並ぶ柱として、ヒートアイランドの緩和を打ち出したのがきっかけだ。チームは都の委託を受け、ヒートアイランドの実態を探るために東京都内の約100カ所で観測してきた。

 都の事業が05年度で終了した後、研究チームは首都圏の大学の研究者たちの支援を受けて観測点を拡大。現在の広域メトロスは首都大の高橋日出男教授が代表となり、文部科学省の科学研究費補助金のもと、21年度まで観測が続くことが決まっている。

 気象庁の観測点がなくても最寄りのアメダスより暑い場所がほかにあってもおかしくない。川越を含め、もっと多くのアメダスを配置すればそれが見つかる可能性がある。しかし、気象庁の山口章吾地域気象観測係長は「防災や生活環境の観点から今の配置が最適と考えており、増やすことは考えていない」と話す。

 各地の暑さ自慢は、今や夏の風物詩の一つになった感がある。熱中症などに用心しながら、暑さと向き合っていきたい。

(池辺豊)

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