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栄林寺 eirinji



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川越観光案内  第16回 榮林寺(えいりんじ)


曹洞宗。蓮池門。川越二代藩主・酒井忠利が建立。 稲荷堂の吒枳尼天(だきにてん)。お掃除小僧。治水家・安井政章は前橋の恩人。


NPO武蔵観研 会長  桑  原  政  則


蔵造りの町並みから、西へ新河岸川に向かって、末広町に入ると閑静な住宅地が続きます。日蓮宗・行伝寺、 曹洞宗・榮林寺、日蓮宗・妙養寺、 時宗・十念寺がたたずんでいます。この一角に8000㎡(2,500坪 )を占めているのが榮林寺です。大正天皇が1912年にお立ち寄りになりました。

榮林寺は、川越の二代藩主・酒井忠利が建立したお寺です。創建時は、今の元町1丁目にありました。かつて相生(あいおい)学校が境内にありました。

「蓮池門(れんちもん)」は川越城の遺構


 榮林寺の山門は、川越城の一郭を移築したものです。もともと市立博物館横の川越武道館あたりにありました。蓮池門は、本丸からみて北東の鬼門に位置していました。川越城の遺構は数が少なく貴重な存在です。破損部分は、市の博物館に収蔵されていますので、修復し、史蹟にする価値があります。


稲荷堂では、吒枳尼天(だきにてん、お稲荷さん)が
 
 境内右手の稲荷堂(いなりどう)には吒枳尼天(だきにてん)が安置されています。吒枳尼天は今では、お稲荷さんと習合しています。


お掃除小僧: 禅宗では掃除が大事


 境内の左手には、ほうきを手にしているお掃除小僧の像があります。お掃除小僧は、朝から晩まで境内を掃除し続けます。「続けることが大切」との開祖さまの教えを忠実に守っています。

治水家・安井政章の墓は 川越市指定史跡に


 安井政章の墓は、川越市の史跡に指定されています。墓地の左側にあります。
 安井政章は、治水家です。向学の名君・藩主・松平斉典(なりつね)のもと、飢饉には年貢を減免するなどして農民を救済しました。
 1845年(弘化2年)、川越藩・川島の荒川の堤防が二度も決壊しました。安井政章は、延べ17万人を用いた大工事で土手を築きました。6kmの鳥羽井堤(とばいづつみ)には、堤にサクラ、低いところにヤナギを植え、洪水を防止しました。今では川島町の桜の名所、荒川サイクリングロードになっています。
 安井政章は、川越藩の分領・前橋でも郡代(ぐんだい)奉行をつとめました。利根川の氾濫のため、前橋藩松平家は1767年(明和4年)に川越に藩庁を移し、川越藩となっていました。安井政章は、利根川の流路改良を行いました。これにより、1867年(慶応3年)前橋藩は、川越藩から離れ再建することができました。前橋市大手町には、前橋の恩人・安井政章の顕彰碑があります。

施餓鬼は大事な行事


 施餓鬼とは、苦しんでいる霊や魂を、供え物をほどこして、供養する行事です。7月20日過ぎのお盆の時期に盛大におこないます。


栄林寺の枝垂桜


川越随一の古桜
栄林寺本堂前に立っていた枝垂れ桜(シダレザクラ)は、川越で一番の古桜といわれていました。地面に着くほどの長い枝に、こぼれんばかりに花をつけていました。しかし、倒木の危険があり伐採され、幼木があとを継いでいます。


スティーブ・ジョブズ:禅でスマホをシンプルに


 開祖・道元は、ただ坐禅をするだけでいいというきわめてシンプルな教えを説いています。「只管打坐(しかんたざ)」です。
 ジョブズは、青年時代から曹洞宗と接していました。断捨離の心が入っています。スマートフォンを、シンプルに美しくつくりあげました。


  ジョブズがスタンフォード大卒業生へ贈った言葉、「貪欲であれ。愚直であれ。Stay hungry, stay foolish」は、曹洞宗の「宝鏡三昧」の言葉です。


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ジョブズの黒いタートルネックは、曹洞宗の作務衣(さむえ)
(写真=時事通信)


筋野家は「百姓の身なれど、刀、槍を許される」


 栄林寺には、筋野家一族の墓所が多く見られます。1895年(明治28年)の「三芳野神社由緒  内務省訓令、(中略) 調査」には、「筋野家に百姓の身なれど、刀、槍を許す」との文言があります。川越藩の重要人物を緊急時に守るために筋野一族が重用されたようです。博物館には、筋野家の用いた刀が収められています。


榮林寺(Eirinji Temple)の概要
山号     雲興山(うんこうざん)  
寺号     榮林寺(えいりんじ)。
宗派 曹洞宗  
創建    1610年(慶長15年)。江戸時代初期
本尊 釈迦牟尼佛像
所在地    〒350-0064 川越市末広町1-7−1。049-222-0607


【後記】


 本稿作成にあたり、曹洞宗・榮林寺の實浄(みき)龍彦 住職にお世話になりました。取材・文責は桑原政則、写真・取材は石山貞夫(川越市文化財保護協会副会長)です。ありがとうございました。



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