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タイ小売り大手 セントラル、ネット拡大へ

タイ小売り大手 セントラル、ネット拡大へ脱・家族主義

2017/9/13  nkを抜粋編集

 アジアの財閥の中でも家族主義で知られるタイ小売り大手、セントラル・グループの経営が転機を迎えている。創業家出身者が占めてきた経営陣への外部人材の登用を急ぐ。オンライン強化や海外進出などの変革を加速するのに欠かせないと判断。3代目世代のトッス・チラティワット最高経営責任者(CEO)のもと、外部のプロの力も生かせる経営への脱皮をめざす。


 「70年間店舗ビジネスで成長してきたが、これからはオンラインとの融合が不可欠だ」。12日、首都バンコクで新しいウェブサービス「オー・ビル・ドゥ・モンド」をお披露目したトッスCEOが力を込めて語った。

 セントラルが国内外に持つ百貨店の商品をアドバイザーとオンラインで相談しながら世界中どこからでも注文できる。今年設立70周年を迎えた同社はこの数年間、欧州の老舗「KaDeWe」など海外百貨店を相次ぎ買収。新サービスは実店舗と電子商取引(EC)を融合させる「オムニチャネル」戦略の中核となる。

 開発を指揮したのは米マッキンゼーの元コンサルタント、ニコロ・ガランテ最高執行責任者(COO)だ。欧州で数々の小売り大手のオムニチャネル戦略を作り、昨年、セントラルに入った。

 「米アマゾンや中国アリババ集団のような明白な勝者がいない東南アジアのEC市場は既存の小売業にも歴史を作るチャンスがある」。そう話すガランテ氏はこの1年間で最高技術責任者(CTO)ら幹部からエンジニアまで外部人材の採用を加速。「毎日採用面接をしている」と笑う。


セントラルはタイ国内で百貨店などを60以上運営する
 セントラルはタイ国内だけで百貨店やショッピングモールを60以上運営。売上高は年3327億バーツ(約1兆1千億円)と、600億バーツ弱とされるザ・モールグループなど2位以下を引き離すタイ小売りの巨人だ。

 15人の取締役会は全員、創業家出身で、一族の「鉄の結束」で事業を伸ばしてきた。創業者ティアン・チラティワット氏に連なる一族は現在224人もおり、うち51人がグループで働く。一族の中で争いごとが起こらないよう、資金分担などを決める家族会議を設け、全員が暮らせる巨大住宅もある。

 この手法はタイの最大財閥チャロン・ポカパン(CP)グループとは大きく異なる。CPのタニン・チャラワノン上級会長は社長に就任する前、姉や兄嫁を事業から退かせ、一族の子女が中核事業に入るのを禁じた。

 今回トッス氏を突き動かしたのは小売業を取り巻く変化だ。国内の購買力低迷に加え、海外旅行が身近となり強みだった輸入品を国内で買う人が減ってきた。望みをかけるのがECで、売上高の約1%にとどまるEC比率を5年後までに15%に引き上げる計画だ。

 「既存の小売りなら何でもわかるが、ECは未知の世界だ」とトッス氏。非創業家中心の「経営チーム」を立ち上げ、COOのガランテ氏とタイ商業銀行や中央銀行の元トップらを入れた。

 CEOに就いて3年のトッス氏は後継者育成計画も始動。候補者には非創業家もいるという。

(バンコク=小野由香子)

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華人系、中国に再び挑む 

 セントラル・グループは多くのタイ財閥同様、華人系だ。創業者のティアン・チラティワット氏が1925年に中国・海南島からバンコクに渡ってきた。ただ中国で売り上げの約4割を稼ぐ同じタイ華人系財閥のチャロン・ポカパン(CP)グループに比べると、中国での事業規模は小さい。

 セントラルは2011年、3代目世代のトッス氏のもとで初の海外市場として中国に進出した。しかし、地場小売りとの競争に敗れ、わずか4年で撤退に追い込まれた。「中国には二度と出たくない」とトッス氏。現在、セントラルの最も大きい海外市場はタイと地理的に近く、消費者の嗜好が似ているベトナムだ。

 とはいえ、日本の百貨店が「爆買い」で潤ったように、中国人観光客がタイや欧州のグループ百貨店でブランド品や食品などを買う需要は無視できない。今回発表のウェブサービス「オー・ビル・ドゥ・モンド」も中国語に対応する。

 中国の電子商取引(EC)大手である京東集団ともタイでの提携へ交渉中との報道もある。実店舗ではなく、オンラインでの再挑戦を模索する。

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