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日本でも脱工業化の推進を。駐日スウェーデン大使  

日本でも脱工業化の推進を  
マグヌス・ローバック  駐日スウェーデン大使

私見卓見 2017/4/27 nkを抜粋編集

【※】スウェーデンの脱工業化の成功
  • 手厚い社会保障システム。
  • 失業しても保険で守られる。多様なキャリアや失敗を許容。
  • 英語教育に力を入れている。
  • 【※】日本の問題点 トップがだめ。終身雇用で、企業のトップは、他のビジネスを知らない。外国経験がない。∴前例踏襲。冒険できない。

 インターネット通話サービスのスカイプ、音楽配信のスポティファイ、ゲームのモージャン……。未上場ながら企業価値の評価額が10億ドル(約1100億円)を超し、伝説の動物にたとえて「ユニコーン(一角獣)」と呼ばれるこれらの企業が、いずれもスウェーデンにルーツを持つことをご存じだろうか。首都ストックホルムは欧州デジタル都市指数(EDCI)で2位に食い込むなど、ベンチャー企業のハブとして知られる。

 日本と同様にスウェーデンは約150年前に工業化を始めたが、人口1千万人弱の小国で、日本より早く製造業の縮小に直面した。通信機器大手エリクソンは最近、国内最後の製造拠点を閉鎖した。製造業の国外移転には反発もあるが、製造業だけでは立ちゆかないことを理解し「脱工業化社会」に移行しつつある。その担い手こそが多くのベンチャー企業にほかならない。

 成功の理由の1つは手厚い社会保障システムだ。失業しても保険で守られる。医療や教育は無料で、子供や自らの老後のためにお金を積み立てる必要もない。多様なキャリアや失敗を許容する風土もある。スカイプなどの成功者は株式の売却益をベンチャー投資に回すなど、リスク資本のプールを作っている。

 人材の受け入れも重要だ。スウェーデンは高度人材だけでなく難民も多く受け入れている。必ずしも高い教育を受けていないが、やる気を持った人が社会に与える好影響は決して見逃せない。英語教育に力を入れ、国際的な人の流動化も後押ししてきた。

 日本で英語教育が遅れているのは、国内の人材の層が厚く、有望な人材を外から求める必要性が薄かった事情もあるのだろう。だがフランスのように過去数十年で英語力を飛躍的に引き上げた大国もある。早期の外国語教育が母語の習得の邪魔にならないことは科学的に示されている。

 日本は製造業の競争力が高く、脱工業化への移行圧力はまだ強くはない。だがグローバル化と脱工業化の流れはもはや止められない。「古い製造業を自国内に取り戻す」とするトランプ米大統領の主張は、川の流れに逆らうようなもので生産的ではない。

 日本とスウェーデンの間では、すでに名古屋大やルンド大などの有力大学が共同研究に取り組んでいるほか、企業同士の連携も進んでいる。そうした協力を通じ、脱工業化で先行した我が国の経験が少しでも参考になれば幸いだ。

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