明石純一 私見卓見
2017/12/20 nkを抜粋編集
<まとめ>
- 250万人の外国人
- 事実上の移民は73万人 外国籍住民は年15万人ペースで増えている。
- 技能実習生 長くても3~5年しか働けない
- 「移民の統合政策指数」で日本は27位。日本語や職務スキルを向上させる仕組みもない。
- 優れた働き手は日本を素通りしている
- 【cf.】外国人労働者新聞
移民問題が世界を揺らすなか、日本は移民の受け入れを公に否定している。移民への世論の反応も芳しくなく、この判断は「現実的」に見える。ただ「現実」には日本では250万人近くもの外国人が暮らしている。私はこのギャップに危機感を持っている。
まず浮かぶのが、技能実習生や留学生などの形をとりながら日本で労働者として働く外国人である。少子高齢化が進む日本社会が彼らの力に頼り始めていることは明白だが、長くても3~5年程度しか働く道がない日本に来る人材は限られてしまう。「ただの出稼ぎ」ならば来日後の能力開発動機は高まらない。
このままでは、優れた働き手は日本を素通りして他の先進国・中進国に向かう。これを助長しないためには彼らが定住できる明確な条件と道筋を示すべきだろう。つまり、目に見えるインセンティブを提供する。社会保障や生活適応上の懸念があるなら、納税履歴や日本語能力といった条件を設けて始めればいい。
これは人権問題というより経済の要請でもある。米マッキンゼー・グローバル・インスティチュートの最近の研究は、移民の受け入れが大きな経済効果を生むだけでなく、社会への移民の統合が経済的貢献に資することを明らかにしている。日本のようになし崩しに「労働力」を受け入れても高い効果は期せない。
すでに定住している外国人をみれば日本で統合政策が進んでいないのは自明だ。日本で永住資格を持つ外国人、つまり事実上の移民は73万人台に上り、この20年で10倍に増えた。だが、日本語力が足りず、特別な指導を要する外国籍の子どもは3万人を超え過去最高を更新している。
先進国を対象とした「移民の統合政策指数」で日本は38カ国中27位である。日本語や職務スキルを向上させる十分な機会も仕組みもない。人員と予算も不足している。政府に実感は薄いが、多くの自治体は対応に苦慮している。
日本人が減少の一途をたどるなか、日本に暮らす外国籍住民は年15万人を超すペースで増えている。政府が移民を受け入れるかどうかという意向とは無関係に現実は進んでいるのだ。人口学的推計によれば、将来の日本は遅かれ早かれ、今の欧州諸国なみの移民人口比に達する。
そのときに移民が日本社会にとって「負債」となるのか「資産」となるのか。後者を望むなら、彼らへの先行投資は不可欠であろう。
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