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夏目漱石 『吾輩は猫である』 <音読

 夏目漱石  『吾輩は猫である』    <音読

オスネコが英語の先生のところで繰り広げる物語。
漱石は、『吾輩は猫である』の成功で、
東大の先生をやめ小説家となりました。

夏目漱石  『吾輩は猫である』  青空文庫

 吾輩わがはいは猫である。名前はまだ無い。

 どこで生まれたか とんと見当(けんとう)がつかぬ。

何でも薄暗い じめじめした所で、

ニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。

吾輩はここで始めて人間というものを見た。

しかもあとで聞くとそれは書生という人間中で
一番獰悪(どうあく)な種族であったそうだ。

この書生というのは、時々我々をつかまえて
煮(に)て食うという話である。

しかしその当時は何という考えもなかったから、
別段恐しいとも思わなかった。

ただ彼の掌(てのひら)に載せられてスーと持ち上げられた時、

何だかフワフワした感じがあったばかりである。

掌の上で少し落ちついて書生の顔を見たのが、

いわゆる人間というものの見始めであろう。

この時妙なものだと思った感じが、今でも残っている。

第一毛をもって装飾されべきはずの顔がつるつるして、
まるで薬缶(やかん)だ。

その後猫にもだいぶあったが、
こんな片輪(かたわ)には一度もでくわした事がない。

のみならず顔の真中があまりに突起している。

そうしてその穴の中から時々ぷうぷうと煙を吹く。

どうもむせぽくて実に弱った。

これが人間の飲む煙草(たばこ)というものである事はようやくこの頃知った。




音読の効用
  • 音読は、目と耳をともに使うので、記憶しやすいです。
  • ストレスが発散し、気持ちが落ち着きます。
  • のどの筋肉がきたえられます
作品の表記について
  • 読みやすいように、表記を改めた所があります。
  • 差別的な表現も、原作の独自性を保つために、そのまま表記しました。


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