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韓国、国際原子力大学院大学で原発人材を養成(NK2012/9/16)


地球回覧韓国、原子力大国への野望
「再処理の特権」米に迫る

 韓国・釜山(プサン)市の中心部から車で約40分。日本海を望む広大な敷地に、韓国で最も古い古里(コリ)1号機を含む6基の原発が動いている。ここに3月、政府肝煎りの学校が開校したというので行ってみた。韓国電力公社と関係4社が設立した国際原子力大学院大学だ。
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 最先端研究でなく設計や建設、運転、管理などを2年で学ぶ。原発を建設し運営するための人材だ。授業は英語で、1学年の定員は100人。50人は外国人留学生を想定し、現在は7カ国から22人を受け入れている。「ここは実際に動いている原発で実習もできる世界に類のない学校です」。朴君哲(パク・クンチョル)総長は、真新しい校舎5階の部屋で胸を張った。
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 理念は現場指導者を育てる国際拠点。そこに「将来の原発輸出先の支援」という目的も込める。留学生の出身国はベトナム、ケニアなど今後、原発需要が見込まれる東南アジアやアフリカの国々がずらりと並ぶ。学費も寄宿舎代も無料だ。「留学生受け入れでできた人脈が将来の輸出ビジネスに役立てばいい」(朴総長)
 韓国は2030年に発電量に占める原発比率を現在の約30%から59%にする目標を掲げる。稼働中の原発は23基。発電能力ベースで米仏日ロに次ぐ世界5位(7月時点)だ。東京電力福島第1原発の事故後も立地推進の姿勢は変わらない。5月に開いた新蔚珍(シンウルチン)原発の起工式には李明博(イ・ミョンバク)大統領も出席した。
 資源のない韓国を原子力に駆り立てるのは第1に電力の安定供給だ。ただ「輸出のタネ」にならないなら、ここまで積極的になるかどうか。09年末にアラブ首長国連邦(UAE)から受注した原発4基は186億ドルのビジネスだ。11年11月の第4次原子力振興総合計画には「原子力をIT(情報技術)、船舶、半導体に次ぐ輸出産業に育てる」と明記してある。
 韓国の原発推進派が悲願とする「権利」がある。使用済み核燃料の再処理だ。今は発電所内に貯蔵するが16年ごろから飽和状態になる。しかし、韓国は米国との原子力協定で、核兵器の原料となるプルトニウムが出る再処理を事実上、禁じられている。燃料であるウランの濃縮も「100%海外に依存する現状を改めたい」との思いが強い。
 協定は14年に期限を迎えるため、現在、改定交渉の真っ最中。「基本的に我が国にも再処理の道が開かれなければならないという認識で交渉に当たっている」。金星煥(キム・ソンファン)外交通商相は7月、国会で明言した。
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 韓国は朴正熙(パク・チョンヒ)大統領時代の1970年代に核開発計画を米国の圧力で放棄した経緯がある。04年には過去に未申告でプルトニウム抽出やウラン濃縮の実験をしていたことが発覚した。「韓国は核武装の潜在能力を獲得したがっている」との疑念がつきまとうのはそのためだ。推進派は「貿易立国の韓国が国際社会で孤立する道を選ぶはずがない」と平和利用のアピールに躍起だ。
 韓国初の原発稼働は78年。「朝鮮戦争後、日本を経由して技術を導入した産業が多い中、原子力は違う」と専門家は口をそろえる。その日本が米国から再処理を認められている「特権国」であることも、自負心とライバル意識をかき立てる。ウラン濃縮から発電、再処理まで――。一連のサイクルに関わってこそ、原発の輸出競争力も高まる。
 米国の姿勢は固い。韓国内でも年末の大統領選に向け野党から「脱原発」の声がでる。ただ、反原発世論は大きな盛り上がりを欠いており、政権交代があっても「原子力大国」への野望を韓国が簡単に捨て去るとは思えない。
 日本が「原発ゼロ」を目指して得るものと失うものは何だろう。古里原発の展望台でそんなことを考えた。さらに2基が建設中の古里原発は、海の向こうの対馬まで70キロほどしか離れていない。
(ソウル支局長 内山清行)
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