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大学で観光人材育成盛ん(NK2012/10/11)


大学

観光ニッポン 人材育成盛ん
玉川大や東海大…学科新設続々 海外で研修、より実践的に

 観光分野で活躍できる人材を育成する動きが全国の大学で広がっている。観光関連の学部や学科の新設が増えているほか、すでに同様の教育を行っている大学でも、より実践的な研修を取り入れるケースが目立っている。低迷する景気の打開策の一つを観光振興と捉える関係者は多く、人材育成が大学の魅力づくりや生き残りにもつながるとみて模索を続けている。
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 「日本の観光潜在力は高い。外国人の視点を持って企画できる人材が求められる」。9月上旬、東京都港区のオーストラリア大使館で、クリストファー・リース駐大阪総領事は大学関係者を前に日本で期待される観光分野の人材像について講演した。
 この講演会は来年4月に観光学部観光学科を新設する玉川大学が開催した。観光学部では全学生に大学2年の秋から1年間の豪州留学を義務付ける。現地大学でエコツーリズムやホテル運営などを学びながら、日本に海外の旅行客を呼び込む素養を育てる狙いがある。
授業は英語で
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 2010年に政府が掲げた「新成長戦略」など、景気回復に強い期待が寄せられている観光分野。玉川大「観光振興が日本の再生に不可欠。観光は21世紀のリーディング産業の一つ」と説明する。1年次から午前中は原則すべて英語で授業を行うなど、国内外の多岐にわたる場面で活躍できる人材を育てる。
 熊本市の東海大学熊本キャンパスでは、来春の経営学部観光ビジネス学科新設に向けた準備が進んでいる。8月末に大学職員がタイを訪れ、学生の海外研修先となるサイアム大学などを訪問し、カリキュラム内容を確認した。
 アジアの旅行客誘致などを学び、日本の観光振興につなげたいとする同キャンパス。観光ビジネス学科は観光を通じた地域活性化のための人材育成に重点を置いており、九州の観光関連団体と連携するほか、中国、韓国語の教育に力を入れ、アジアからの旅行客誘致に役立てる。
 観光関連の教育は立教大学が専門学科を設けた1960年代から徐々に進んだとされる。08年に観光庁が発足し、観光を日本の主力産業に育てる動きが活発化した。景気低迷を打開する糸口の一つとして期待が高まり、大学での観光関連学部・学科の新設も増えた。
 10年度から11年度にかけては大学の組織改編などの影響で学部・学科数、定員数は微減の形となったが、全体として増加傾向は続いている。東日本大震災の発生以降、被災地の観光振興が復旧・復興の大きな力になっていることもあり、観光分野の人材教育を見直し、大学の生き残り策の意味でも新たな一歩を踏み出す例は多い。
企画力を磨く
酒造会社の杜氏(右)の仕事を取材する跡見学園女子大の学生(9月、福島県会津若松市)
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酒造会社の杜氏(右)の仕事を取材する跡見学園女子大の学生(9月、福島県会津若松市)
 9月上旬、創業200年を超す福島県会津若松市の酒造会社「鶴乃江酒造」で跡見学園女子大学観光マネジメント学科の学生6人が杜氏(とうじ)の女性を質問攻めにした。同大学は日本旅行とタイアップ。カリキュラムの一環で女子大生の視点で旅行商品を企画する取り組みの一場面だ。
 会津若松は来年のNHK大河ドラマ「八重の桜」の舞台として注目を集める。女性主人公のような強い女性を探し出し、旅行商品の訪問先の目玉にする考えだ。大学2年の黒田侑希さんは「福島で素晴らしい女性と出会い、内面から美しくなる旅を提案したい」と意気込む。
 北海道大学は学生だけでなく地元住民からも観光振興に尽力できる人材を生み出すことに力を注ぐ。観光学高等研究センター(CATS)がニセコ町と協力し、住民向けにマーケティングの基本などを教えるビジネス講座や地元観光地を巡り観光振興に役立ててもらうバスツアーを始めた。
 「観光事情に精通したコンシェルジュを地元から輩出したい」とする同センター。経済の活性化、地域の産業振興を目指し、各大学の人材育成の取り組みがさらに活発になりそうだ。
 


カリキュラム色々 特色作り課題に

 学習内容が比較的体系化している法学や経済学などとは異なり、観光関連の学部・学科のカリキュラムは多種多様といえる。国際関係論や統計学、産業政策論関連の履修など学術的な範囲が広い上、接客術をはじめ実務的なことを教える大学などもある。
 様々な素養を身に付けるとともに、人と人をつなぐコミュニケーション能力を高めることを目指すだけに、学生の就職先もバラエティーに富む。例えば1998年に日本で初めて観光学部を設けた立教大学。同学部の2011年度の就職先は旅行会社やホテルなど観光関連が24%にとどまる。
 一方で、金融・保険は17%で、小売りが14%に上った。村上和夫・観光学部長は「観光学部の学生は多方面の職種(の企業)から求められている」と話す。
 ただ、一部の観光関連の学部・学科では定員割れの悩みと対峙してきた実情もある。「各家庭の経済状況は厳しさを増しており、(観光について学ぶのに)教育内容に大差がないとして専門学校に行く学生も多い」と駿台予備学校の石原賢一・情報センター長は分析する。
 国内外の範囲を限定せず、広いフィールドの中で特色や実効性のあるカリキュラムをいかに作り上げていけるかが、各大学の課題といえる。
関連キーワード
カリキュラム、コミュニケーション能力