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緑地にクールアイランド効果が(NK2012/10/11)


経済教室

時事解析変わる都市の気候(4) 見直される緑地効果 冷気しみ出す

 コンクリートに覆われた都市を歩いていて、緑地の多い公園に入るとひんやりすることはないだろうか。日陰が多いだけでなく、木々が根から吸収した水分が葉から放出される蒸散に伴い周囲の熱が奪われるからだ。都市緑地のクールアイランド効果と呼ばれている。
 都内有数の緑地である皇居の気温は周辺と比べてどうか。2007年8月に環境省と三上岳彦帝京大教授(首都大学東京名誉教授)らが実施した観測では、平均気温は皇居内では外に比べ1.8度低かった。気温差は最大4.1度に達した時間帯もあった。
 最高気温が35度以上の猛暑日は皇居内では2日だったのに対し、外では8日。最低気温が25度以上の熱帯夜は皇居内で19日と、外よりも5日少なかった。クールアイランド効果は新宿御苑などでも確認された。「緑地面積が20ヘクタールを超えると、内外で2度程度の気温差が出てくる」(三上教授)。ただ、緑地の気温も周囲と差を保ちながらも上昇している。
 緑地の冷気が外に出れば、周囲の気温をある程度押し下げる効果が期待できる。皇居では冷気のにじみ出しと風下への流れも調べた。冷気の到達範囲は夜間の風がない時で200~250メートル。日中、海風が吹いている時でも風下側に300~350メートルと比較的短距離だった。
 夜間のお堀の水温は比較的高く、冷気が温められている可能性もあるという。皇居周辺の交通量の多い道路も障害になっている。新宿御苑では、近くのビルが冷気のしみ出しを邪魔しているとみられるケースもあった。
(編集委員 安藤淳)