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漆の伝統、100年かけ地場産業に 茨城県大子町(だいごまち)

【8-1】(茨城新聞社、文と写真・津留伸也)引用編集
 「大子漆」を使った漆器を販売する工房、器而庵

国内第2位の生産量を誇る大子(だいご)漆。
その拠点となる茨城県大子町に2010年夏、大子漆を使った漆器の新ブランド「器而庵(きじあん)」がオープンした。

 記念セレモニーで、新ブランドを立ち上げた漆工芸作家の辻徹(つじ・とおる)さん(49)は「この地の漆文化を根強く、太いものにしたい。
幅広い情報を発信していきたい」と力強く宣言した。

 水戸市から福島県会津若松市に至る国道118号。
この道を北上していくと茨城県常陸大宮市山方地域から、周囲に険しい山林が迫ってくる。

 ここより北が透明感と光沢、乾きの良さから品質世界一といわれる大子漆の生産地となる奥久慈地方。
良質な大子漆は昔から、輪島塗や春慶塗など高級漆器の仕上げ用として使われてきた。
人間国宝に認定されている漆芸家、大西勲(おおにし・いさお)さん(68)も使用している。

 しかし、近年は漆を採取する漆かき職人の後継者不足などから、伝統産業としては衰退していた。

 そこで、大子町では漆産業振興のため、若手漆かき職人の育成や漆芸家へのサンプル提供、漆の植林支援など多くの支援活動を行ってきた。

その一つが、辻さんのような若手作家を地元に呼び込み、大子漆を樹液採取から漆工芸品制作まで一貫して行う地場産業に育て上げる援助事業だ。

 1996年に常陸大宮市に工房ウェアウッドワークを設立した辻さんは「奥久慈は漆の産地ではあったが、漆器の産地ではなかった。
100年かかるかもしれないが、大子漆の伝統を地場産業として定着させていきたい」との思いを強くする。

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