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祇園では、クギ1本打つのも事前協議が

2-02】(京都新聞社、文・沢田亮英)引用編集
祇園祭の神幸祭でにぎわう花見小路=京都市東山区
石畳の道が雨にぬれた7月17日夜。
お茶屋が並ぶ東山区の花見小路は祇園祭の神幸祭(しんこうさい)でにぎわい、みこしを担ぐ「ホイット、ホイット」の掛け声が響いた。

 花見小路は、四条通を挟んだ北と南で街の景色がくっきりと異なる。
ビルが林立するネオン街の北側とは対照的に、南側は明治からのたたずまいを残す町家が連なり、花街の情緒豊かな町並みと暮らしが今も息づく。
 
 ▽改修にも基準
 
 「学園が土地を持っているのが、町並み保存で大きな要素になっている」と芸妓(げいぎ)や舞妓(まいこ)が芸事を学ぶ学校法人「八坂女紅場学園(やさかにょこうばがくえん)」の津田健次(つだ・けんじ)事務長(79)は話す。
景気に左右されて取引される私有地の集まりでなく、お茶屋のおかみたちで運営する学園が一元的に所有する「地域共有」が、まちづくりに大きな役割を果たしている。

 学園の所有地は、京都市が1999年に歴史的景観保全修景地区に指定した祇園町南側地域約6ヘクタールのうち、花見小路沿いを中心とした約2・8ヘクタール。
明治初期に京都府が地元に払い下げた経過があり、今は学園が約200区画をお茶屋や各店舗に貸している。
借地人とは町並み保存の合意書を学園と交わしており、建て替えや改修は学園に申請し「高さは2階建てが基本」など27項目を定めた「意匠基準」に合わせなければならない。

 学園が基準をつくったのは1994年。
バブル経済で相続税が負担できずにお茶屋を廃業するケースが増え、そこに開発の波が押し寄せる事態への危機感がきっかけだった。
その後、京都市の主導で景観整備が進められる動きが出たが、住民たちは96年、祇園町南側地区協議会を設立し「クギ1本打つのも事前協議がいる」というほど細かな景観基準をつくり、新規出店業種の規制、防火の取り組みも進めた。
市も条例改正や規制緩和で景観保全を後押しした。
 
 ▽空き家はゼロ
 
 同協議会の杉浦貴久造(すぎうら・きくぞう)会長(75)は「南側は見苦しくて、どないもならん建物はなくなった。
規制はひとしきり終わり」と振り返り、今は耐震強化のため、建物の内部にまで目を光らせる。

 北側では、世界的な金融危機の影響で空きビルも目立つ。
「まちづくりでは『地価が下がる』と反対する人が必ずいる。
地価が下がって何が困る。
売ってどこへ行くのか。
南側はこれだけの不況でも空き家がない」と、杉浦さんは胸を張る。

 土地の地域共有を土台に、高い住民自治の意識で町並みが守られている

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【京都市の景観規制】

2007年9月、京都市の市街地のほぼ全域で規制が強化された。
高さは都心部で最高31メートル(10階程度)、デザインは一般住宅でも瓦屋根など和風を基調とする。
五山送り火などの眺望を阻害しないための高さ規制も導入された。
祇園町南側は市街地で最も基準が厳しい。

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