巨大地滑り跡を観光に 震災乗り越え、前へ。栗原市

【20-1】(河北新報社、文と写真・三浦康伸)  引用編集

細倉鉱山の説明に聞き入る「ジオガイド養成講座」受講者ら。2014


 2008年6月に発生した岩手・宮城内陸地震で、最大震度6強を記録した宮城県栗原市。
地震でできた巨大地滑り跡地を活用し観光復興につなげようと、市が進めるのが、地形を生かした自然公園「栗駒山麓ジオパーク構想」だ。15年度登録を目指した動きが本格化している。

  構想の目玉は面積約98ヘクタールの「 荒砥沢 (あらとざわ) 地滑り」を含む大規模崩落地群。
荒砥沢ダム北側で発生した地滑りは幅約1・3キロ、最大落差150メートルにわたって地層がはっきりと分かり「世界最大規模で学術的に極めて珍しい」と専門家が言う。

 構想は、単なる崩落地の紹介にとどまらない。
市内に点在する産業史跡や農村風景、食文化など多岐にわたる地域遺産を、崩落地群と絡めさまざまなパックツアーとして提案する。
栗原全体をアピールする狙いだ。
 ツアーで重要な役割を担うのが現地を案内する「ジオガイド」。
多くの訪問者に対応する人材の確保は急務で、市は一昨年から養成講座を開催し育成に努める。
昨年12月、同市 鶯沢 (うぐいすざわ) の「 細倉 (ほそくら) 鉱山資料館」であった講座には市民ら約30人が参加。
地域の近代産業遺産の成り立ちについて学んだ。

 
 受講者の一人の 阿部捷広 (あべ・かつひろ) さん(72)=同市一迫=は、内陸地震を経て自身が住む地域への関心が高まったことが参加の動機という。
「魅力ある地域資源を結び、磨き上げることが必要。講座で学んだことを生かし、地域づくりに貢献したい」と意気込む。

 内陸地震、東日本大震災と、栗原市はこの5年間に二つの震災を経験した。
悲劇を好機に変え、前に進んでいこうとする住民の強い期待がジオパークに込められている。

* 足元で途切れた道路の続きが、眼下百数十メートルの位置にある。内陸地震が生み出した光景は「地球の息遣い」を知る教材でもある。

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