工夫重ねローカル線快走 SL復活、夢も広がる。鳥取県若桜(わかさ)町

【6-3】(新日本海新聞社、文と写真・北尾雄一)引用編集


 旧国鉄時代の蒸気機関車(SL)が保存されている若桜鉄道若桜駅。
SLが引くトロッコに乗ることができる。2012
緑に囲まれた山あいの終着駅で、気動車から降り立った年配の団体客は、旧国鉄時代の木造駅舎や給水塔を見学。
手押し式の転車台を回し、蒸気機関車(SL)が引くトロッコに乗っては歓声を上げた。
鳥取県東部の八頭(やず)、若桜(わかさ)両町を走る若桜鉄道。
かつて廃止も議論された延長19・2キロのローカル線はいま、全国から注目を集める観光路線として生まれ変わりつつある。

 同鉄道は、旧国鉄若桜線を引き継いだ第三セクター。
2006年には赤字補てんの基金が枯渇する見通しとなり廃止論が浮上したが、沿線住民から存続を願う声が続出し、09年には鉄道施設を両町が所有し、鉄道会社の負担を軽減する「上下分離方式」を導入し存続へとかじを切った。

 しかし、沿線の過疎化は深刻で、地元の利用だけでは黒字化が望めない。
そこで関係者は、昭和初期につくられた貴重な鉄道施設に光を当て、施設見学と乗車券をセットにしたツアーを都市部の旅行会社に売り込んだ。
その結果、年間7千~8千人が訪れる人気スポットに成長。
09年度から3年連続で黒字となった。

 観光客は周辺の観光施設で土産物も買うため、地元への経済効果も大きい。
若桜鉄道の原卓也(はら・たくや)社長(65)は「鉄道の存続にとどまらない。過疎化が進む地域に光が差すことになる」と指摘する。

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