2017/9/1 nkを抜粋編集
【注】通勤鉄道と高速鉄道
通勤鉄道=都市鉄道: 2024年開業
高速鉄道:シンガポール~クアラルンプール。2026年開業。
/nk 2017/9/1 |
「アジアや東南アジア諸国連合(ASEAN)などのビジネスを呼び込む商業ハブになる」。シンガポールのローレンス・ウォン国家開発相は、通勤鉄道の開業予定時期の発表に立ち会い、通勤鉄道と高速鉄道の開業によるマレーシアとの一体開発に意欲を示した。
通勤鉄道はシンガポールとマレーシア南端の都市ジョホールバル中心部の約4キロメートルを結ぶ。1時間当たり片道1万人を輸送でき、出入国審査は乗車時に1回で済ませることができるようにする。シンガポールの発着駅は建設中の都市鉄道に接続する。
信号システムはGEの納入が決まった。同社はインドで生産したディーゼル機関車をインド国鉄向けに大量に納入。アジアで膨らむ鉄道整備での受注に力を入れている。
運行はシンガポールの交通大手SMRTと同マレーシアのプラサナ・マレーシアによる合弁会社が担う予定。SMRTは26年に開業予定のシンガポールとマレーシアの首都クアラルンプールを結ぶ高速鉄道計画にも参画する意思を表明している。これに先駆けて2国間をまたぐ鉄道の運営実績を積みたい考えだ。
鉄道による一体開発は両国肝煎りの事業だ。シンガポールは同国に通勤しやすかったり、企業の拠点間の往来がしやすかったりする都市圏をマレーシアに広げることで、さらなる発展をめざす。マレーシア側も企業誘致の効果を期待している。
シンガポールは金融機関や研究開発拠点が集積する東南アジアきっての先進都市だが、近年は経済成長の鈍化が鮮明になっている。企業の拠点を新設したり、住宅を建設したりするための土地が少ないことが一因だ。
両国を結ぶ2本の橋を越えて往来する人は今でも1日40万人に上る。政府間の取り決めで両国民は入国審査が簡易な手続きで済むため、マレーシアからシンガポールに通勤する人も増えている。
もっとも、通勤や帰宅の時間帯は渋滞で1キロメートルの橋を越えるのに1時間以上かかることもある。通勤鉄道が開通すれば、往来は一層増えるとの期待が大きい。
駅予定地周辺の都市開発も進みそうだ。通勤鉄道と高速鉄道の駅予定地の周りでは住宅や商業施設、大学などの建設ラッシュが起きている。
マレーシア側の高速鉄道の駅近くにスマートシティーをつくる都市開発計画には三井物産も参画する。同社は、不動産開発のほか太陽光発電などの日本の最新技術を持ち込み、街全体のエネルギー管理なども計画する。マレーシアで街づくりの実績を上げ、都市開発が今後活発化する東南アジアの他の地域に広げたい考えだ。
高速鉄道は日中を軸に受注競争が展開される見通しだ。シンガポールは国内の都市鉄道網の延長を進め、マレーシアもクアラルンプールの都市鉄道や東海岸を通る鉄道などいくつもの計画が走る。こうした計画は「建設業界に恩恵をもたらす」(マレーシアの証券会社、メイバンク・キムエン)との見方が強い。
シンガポール政府によると、同国からマレーシアへの直接投資残高は00年から15年の間に4倍強に増えた。鉄道網の整備で両国の経済的な結びつきが一層強まれば、地域の経済活性化を後押しすることになりそうだ。
(シンガポール=菊池友美)
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東南ア、鉄道建設相次ぐ
2017/9/1
東南アジアでは都市鉄道の建設ラッシュが続く。マレーシアでは7月にクアラルンプールと郊外を結ぶ大量高速輸送システム(MRT)の第1路線が全線開通し、インドネシアでは同国初のMRTが2019年ごろの運行開始に向け建設中だ。
鉄道網の拡大は人々の生活圏を郊外に広げ、沿線の住宅開発などの商機も生み出す。16年8月に都市鉄道「パープルライン」が開通したバンコクでは中心部の外側を囲む地域で集合住宅や商業施設の開発が加速する。こうした各国の計画には日本企業も多く関わる。
広域経済圏「一帯一路」構想を掲げる中国も東南アジアの鉄道事業の受注に高い関心を示しており両者は火花を散らす。マレーシアでは東海岸鉄道やクアラルンプールの都市鉄道計画で中国が建設や車両を受注した。
シンガポールとクアラルンプールを結ぶ高速鉄道は年内に入札が始まる。日本は技術移転や駅周辺の都市開発を含めた「パッケージ型」の新幹線輸出をもくろむ。鉄道網拡大で広がる東南アジアの商圏獲得合戦はすでに始まっている。
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