不老川に清流復活

2012年3月19日(月)
不老川(ふろうがわ)に清流復活 基準最低、県内ゼロに  埼玉新聞

県は河川水質の改善に伴い、環境基準が最低の「E類型」だった不老川と芝川のランクを上げた。かつて日本一汚い川だった不老川は2ランク上のC類型、芝川は1ランク上のD類型となり、県内でE類型の河川はゼロになった。県水環境課は「工場の排水規制や下水道の普及、流域住民と連携した生活排水対策の推進など、官民一丸で浄化活動に取り組んだ結果。今後もさらなる水質改善を目指したい」としている。

不老川は東京都瑞穂町の狭山池を水源とする1級河川で、入間市や狭山市、川越市などを流れて新河岸川へ注ぐ。芝川は主に県東部を流れる1級河川で、桶川市やさいたま市、川口市などを流れて荒川に注いでいる。

魚が快適に生息できる水質レベルは、生物化学的酸素要求量(BOD)の値が5ミリグラム/リットル以下とされている。しかし、かつての不老川は生活排水や家畜の汚水が垂れ流しの状態でBOD値は100を超え、1983年から3年連続で「日本一汚い川」の不名誉なレッテルを張られた。芝川も72年当時のBOD値は59で、県内で汚濁の著しい河川の一つだった。

両河川では、行政や市民団体が連携して水質浄化に取り組み、2010年のBOD値は不老川が4・9、芝川は5・4まで改善。この結果を受け、県は環境基準の見直しを行った。

85年から不老川の浄化活動に尽力してきた「不老川をきれいにする会」の新井悟樓会長(87)=狭山市=は「活動を始めたころは、川の中にオートバイやドラム缶が捨てられ、動物の死骸や洗剤の泡がたまり、悪臭が漂う悲惨な状況だった。官民一体の努力が実を結び、清流によみがえったことは本当にうれしい。大変だったが、頑張ってきて良かった。人生に悔いなしです」と、不老川と歩んだ27年間の思いを語る。

県内の河川について、県はアユが生息可能とされるBOD値3以下を目指している。10年度調査では、目標を達成していた河川の割合は77%に上り、過去最高を記録した。県水環境課は「今後も下水道の整備や合併処理浄化槽への転換などを通じ、県内河川のさらなる水質改善に努めたい」と話している。


環境基準 人の健康を保護し、生活環境を保全する上で維持されることが望ましい基準であり、行政目標として設定されるもの。BOD(Biochemical Oxygen Demand=生物化学的酸素要求量)は河川の汚れを示す代表的指標。微生物が水中の有機物を分解する際に必要とする酸素の量を表したもので、一般に値が大きいほど水質は悪いと言える。BODの環境基準は「AA類型」(1ミリグラム/リットル以下)から「E類型」(10ミリグラム/リットル以下)まで6段階に区分されている。

不老川ってこんな川