2016/06/28

クールな体験、地方で探す。日経2016/6/19。インバウンド観光

クールな体験地方で探す。「鳥取 コナン」で検索。日経2016/6/19。編集


  1.  中国・上海総領事館。
    リピーターが多い個人旅行用は40%増えた。
    訪日客の関心の「モノ」から「コト」へのシフトもある。
    旅慣れた訪日客は日本でしかできないニッチな体験を求め、全国各地を歩き始めた。
  2. 昔ながらの蔵造りの街並みから「小江戸」と呼ばれる埼玉県川越市では和装の訪日客が行き交う。
    台湾から訪れたツァン・スージュエンさんは初めて着た浴衣に「伝統的で美しい衣装にうっとりする」と話す。
  3. 地方の外国人の延べ宿泊者数は15年に前年比60%増えた
    訪日客が地方に足を延ばす傾向は強まっている。
    訪日人気の代表格がアニメなどの「クールジャパン」だ。
  4. 鳥取県の「青山剛昌ふるさと館」(北栄町)では平日、中国語が飛び交う。
    お目当ては人気漫画「名探偵コナン」だ。
    作者の出身地に建てられた記念館に海外からファンが押し寄せる。
    2015年度の来館者は初めて10万人を突破。約1割をインバウンド(訪日外国人)客が占める。
  5. 栃木県、大田原ツーリズムが手掛ける「農家民泊」。
    農家と一緒に野菜を収穫したり、郷土料理を作ったりして、日本に根付く田舎の暮らしを堪能できる。
    年6500人の体験者の約3割が訪日客だ。
  6. 秋田県仙北市は、温泉と病院での健康診断を組み合わせた医療ツーリズムを推し進める。
    外国人医師の受け入れ体制も整える。
  7. 2020年に訪日客4000万人をめざす日本。インバウンドの果実を日本全体に広げるためには、訪日客をさらに地方に分散させることができるかがカギとなる。





★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★ 【原文】

 47都道府県のうち、宿泊客数が下から4番目の鳥取県。しかし、空港から車で40分も離れた「青山剛昌ふるさと館」(北栄町)では平日、中国語が飛び交う。

【画像】蔵造りの町並みを歩く訪日英国人(埼玉県川越市)

 お目当ては人気漫画「名探偵コナン」だ。作者の出身地に建てられた記念館に海外からファンが押し寄せる。2015年度の来館者は初めて10万人を突破。約1割をインバウンド(訪日外国人)客が占める。

 「鳥取とコナンを併せて検索している。漫画をきっかけに鳥取を訪れる傾向がうかがえる」。中国ネット検索最大手、百度(バイドゥ)日本法人の高橋大介国際事業室室長は中国人の動きをこう分析する。

■増える個人旅行

 1~4月の訪日観光ビザ発給件数が前年同期比15%増えた中国・上海総領事館。初めて訪日する「一見(いちげん)さん」が中心の団体旅行用が5%減る一方、リピーターが多い個人旅行用は40%増えた。爆買いがしぼむ背景には訪日客の関心の「モノ」から「コト」へのシフトもある。

 旅慣れた訪日客は日本でしかできないニッチな体験を求め、全国各地を歩き始めた。

 昔ながらの蔵造りの街並みから「小江戸」と呼ばれる埼玉県川越市では和装の訪日客が行き交う。台湾から訪れたツァン・スージュエンさんは初めて着た浴衣に「伝統的で美しい衣装にうっとりする」と話す。

 かつてすさんだ街として知られた横浜市黄金町。高架下のスタジオで開かれるアートイベントに中華系の訪日客が目立ち始めている。町の名前が中国で縁起が良いとされる金を連想させる。理由は単純だが、交流サイト(SNS)経由で拡散し、評判となった。訪日客が集まれば、そのための商売やイベントも増え、街は活気を生む。

■農家や温泉魅力

 観光庁によると、地方の外国人の延べ宿泊者数は15年に前年比60%増えた。東京、京都、大阪など三大都市圏の42%増を上回り、訪日客が地方に足を延ばす傾向は強まっている。

 訪日人気の代表格がアニメなどの「クールジャパン」だ。だが、「クール」は人によって感じ方が違う。日本人が知らない魅力を訪日外国人が発見している。

 栃木県大田原市の第三セクター、大田原ツーリズムが手掛ける「農家民泊」。農家と一緒に野菜を収穫したり、郷土料理を作ったりして、日本に根付く田舎の暮らしを堪能できる。年6500人の体験者の約3割が訪日客だ。

 玉川温泉や乳頭温泉など日本を代表する名湯を抱える秋田県仙北市は、温泉と病院での健康診断を組み合わせた医療ツーリズムを推し進める。国家戦略特区を使い、外国人医師の受け入れ体制も整える。5月下旬には中国国家観光局の日本駐在幹部が訪れ、門脇光浩市長が出迎え熱心に売り込んだ。

 リピーターの増加で、訪日外国人の行き先に変化の兆しが出てきたのは間違いない。それでも、三大都市圏に宿泊する訪日客がまだ6割を超え、都市部のホテルは慢性的に予約を取りにくい状況が続いている。

 20年に訪日客4000万人をめざす日本。インバウンドの果実を日本全体に広げるためには、訪日客をさらに地方に分散させることができるかがカギとなる。日本人が忘れてしまった魅力を再発見してくれる訪日客が増えれば、新たな地域活性化にもつながる。

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