タイの悲しみ今も 国王死去から1カ月 2016-11-12 【4+】


タイの悲しみ今も 国王死去から1カ月  2016-11-12:日本経済新聞 【4+】

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タイ・バンコク・ポスト「最善の方法は、国王の志を継ぐこと」 2016.10.24 サンケイ 

 70年余りタイに君臨したプミポン・アドゥンヤデート国王が13日に88歳で死去し、政府はワチラロンコン皇太子(64)が王位を継承すると発表した。タイ各紙は、社会事業に自ら汗を流し、政治の安定を支えた国王の功績をたたえ、国民の悲しみを一斉に伝えた。一方、英国紙は、皇太子が新国王として国民の敬愛を得られるかは疑問だとして、王位継承が政治不安を招きかねないと指摘した。


バンコク・ポスト(タイ)「言葉で表現できないほどの喪失感」

 プミポン国王の死去を受け、タイの主要各紙は翌14日付から一斉に題字を白黒に変えるなどして弔意を表した。国民から深く敬愛された国王の生前の功績を写真グラフで振り返るなど、紙面で「名君」をしのんだ。各紙の社説は、読者に悲しみを乗り越え、国父の遺訓を肝に銘じて、国の結束を維持し発展を継続するよう呼びかけた。

 英字紙バンコク・ポスト(電子版)の14日付の社説は冒頭、「言葉で表現できないほどの喪失感、嘆き、苦悩、これが全世代のタイ国民が今日、抱いている感情だ」と述べ、読者と悲しみを共有した。


方、「悲嘆にくれながらも、国王をたたえる最善の方法は、国王の志を継ぐことだと、みな肝に銘じるべきだ」と訴え、健康管理や教育、音楽からスポーツ、科学発明や農村開発など、幅広い分野で才能を発揮し、国に貢献した国王への敬意を示した。

 一方、英字紙ネーション(同)も15日付で「国王が掲げた明かりに導かれて前進を」と題する社説を掲載。国王が若いころ、自ら地方の現状を視察して社会事業を立ち上げる「王室プロジェクト」を推進した際、カメラと地図を手に農村を回った国王の写真が、多くの国民に親しまれたことなどに触れた。

 ネーション(同)の17日付社説は、国王死去後に国の結束を守るのは「私たちの責任だ」の表題を掲げた。クーデターなど政情不安が繰り返されるたび、国王は国民の「父親」として対立する勢力に結束を呼びかけ、「大規模な内戦を回避してきた」とたたえ、国民に自覚を呼びかけた。さらに18日付社説では、諸外国との交流を進めた国王の功績に言及した。1959年のベトナムを最初に、アジアや欧米など30カ国近くを歴訪し、王室外交を展開したと紹介。国王が進めた地方開発事業は、隣国にも恩恵を与え、タイの評価を国際的に高めたと振り返った。(シンガポール 吉村英輝)


聯合早報(シンガポール)「新国王、支持と尊敬を得られるか」

 タイを取り巻く東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国は、プミポン国王の死去と王位継承の行方に高い関心を示している。タイは域内でインドネシアに次ぐ第2の経済大国で、その政情不安は周辺国に大きな影響を及ぼしかねないからだ。

 シンガポールの中国語紙、聯合早報は15日付で「タイ国王の死去はタイ政治の不安定化につながりかねない」と題する社説を掲載。国王は「長く国の要となってきた」とし、その死去により、タイ政治が再び不安定化する事態を多くの人が懸念していると指摘した。

 社説は、国王の健康問題は長年指摘されてきたが、「王位継承については公には議論されてこなかった」とした上で、その理由について、70年間にわたり君臨してきた国王の偉大さをあげた。国王は人生の全てを国民にささげ、地方も含めたタイ国民の生活向上に大きく貢献したとたたえた。

 ワチラロンコン皇太子が、国民とともに国王を追悼することなどを理由に、王位継承に時間をかけたいとしていることについては、「賢い選択だ」と評価。政治、社会、経済混乱の可能性を押さえ込むことが、軍主導の暫定政権が民政復帰に向けた総選挙を行う環境整備につながるとした。

 皇太子については、すでに高齢で、長く欧州で過ごしたため、「国民は近い存在とは思っていない」と厳しい見方を示した。一方で、皇太子は暫定政権のプラユット首相と近く、軍とも関係があり、王位継承は円滑に進むとの見方も併記。新国王として即位した後、父親同様に、複雑な政治環境の調停者としての指導力を国民から認められ、支持と尊敬を得られるか、様子を見守る必要があると説いた。

 その上で、王位継承後にタイが再び政治混乱に陥れば、プラユット氏が軍による支配を強化する理由を与えると分析。総選挙に向けて新政党を立ち上げ、プラユット氏の首相続投を模索する動きがあることに注目した。(シンガポール 吉村英輝)

                  


ガーディアン(英国)「皇太子の王位継承に疑問」

 英紙ガーディアンは14日付で、70年以上在位し、民主主義国家としてのタイの安定の象徴だったプミポン国王の死去で、政治的に不安定な状態が懸念されると警告した。

 プミポン国王がおよそ20回ものクーデターや騒乱に遭遇しながら70年間在位し、タイが民主主義国家であり続けたことについて同紙は、「国王が国家統合の父となったからだ」と指摘。

クーデターという国家存続の危機に際し、関係者を王宮に呼んで事態を沈静化させたエピソードに触れ、国王を立憲君主として評価した。国民は深い悲しみに包まれているとも報じた。

 その上で、同紙は、ワチラロンコン皇太子が3度の離婚歴がある「プレーボーイ」で、新国王として国民の敬意と信頼を早急に得られるかは疑問だとして、「国王の死はタイを不安定にさせる政治的な混乱をすでに引き起こしている」と指摘した。

 また、英紙タイムズは14日付で、国民から敬愛されたプミポン国王が「英国のエリザベス女王や日本の天皇陛下など、ほかの立憲君主たちに劣らず影響力があった」と称賛した。「いかなる後継者でも国王に匹敵する人気を得ることは困難だが、数々の常軌を逸した行動を重ねて来たワチラロンコン皇太子が即位することは、多くのタイ国民には受け入れがたい」と述べ、皇太子の王位継承がすんなり進むかどうかには疑問が伴うという見方を示した。

 その理由として同紙は、内部告発サイト「ウィキリークス」が2010年に公開した米外交公電を引用した。この中で、皇太子は愛人と愛犬のミニチュアプードルを伴ってドイツで過ごし、奇怪な行動をしたと記されていたと伝えた。3人目の妻で離婚したシーラット妃の親族が汚職で逮捕されたことも報じた。同紙は米国の外交官がタイの有力者から聞いた証言として、「皇太子より妹のシリントン王女が王位を継承する方が好ましい」という見方があったことも伝えた。(ロンドン 岡部伸)



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