2017/01/12

2017年 の10大リスク。イアン・ブレマー

2017年 ユーラシア・グループの10大リスクと「サプライズ」
奥山真司 2017年01月04日 blogos


さて、すでに皆さんも御存知かもしれませんが、イアン・ブレマー率いるユーラシア・グループが、毎年恒例の「今年予想される10大リスク」を発表しました。

論より証拠、まずは日本でも報じられたリストを見てください。

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1「わが道を行くアメリカ」
2「中国の過剰な反応」
3「弱体化するドイツ・メルケル首相」
4「改革の頓挫」
5「技術と中東」
6「中央銀行の政治化」
7「ホワイトハウス対シリコンバレー」
8「トルコ」
9「北朝鮮」
10「南アフリカ」

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このリストを見てまず感じるのは、トップ3は米中欧ということで、世界の大国関係の位置づけがそのまま反映されたもの、ということがわかりますね。

ただしここで気になるのは、ロシアがランクインしていない点です。間接的には3のメルケルに関わっていると言えないこともないですが、欧州での不安定要因の一つとなってプーチン閣下が注目されていないのはちょっとさびしい。

さて、私がこのリストを見てから簡潔に言いたいことは二つあります。

まず一つ目は、サプライズは必ず発生する、ということです。

ブレマー率いるユーラシア・グループは、たしかに鋭い人間を集めた会社でしょう。もちろんこの記事にもある通り、去年は(欧米)同盟の空洞化や閉ざされた欧州などを上位のリスクに予想」したわけですが、それは必ずしもトランプの当選やイギリスのEU離脱のようなことを予測できたわけではありません。

何が言いたいかというと、未来予測は基本的に不可能なものであり、とりわけ国際政治の分野では必ず誰も予期しなかった「サプライズ」が起こる、ということです。

そして二つ目に何が言いたいかというと、そのサプライズが起こった時に、われわれはパニックになってはいけない、という至極当然ですが、実際になかなか実践できないことです。

サプライズが起こると、人々はパニックを起こします。そしてものごとをなんとか自分たちの都合のよい方向に持っていこうとして、感情に任せた動きをします。ところが感情論というのは、どの時代でもトップがうまく操作しないかぎり、行き着くところは政策の破綻です。

たとえば今年に去年のトランプ当選並のショック(中国民兵の尖閣上陸や南スーダンでの死者など)が日本に起きたとしましょう。すると必ず日本のメディアや識者たちは、非常に感情的な反応(もしくは無反応?)をするでしょう。つまりここでパニックになるわけですが、私が心配するのはそのパニックによって誤った判断をする人間がたくさん生まれる、という事実です。

そもそもサプライズは起こるものです。なので、むしろそこで問われてくるのは、その全く予期しない出来事によるサプライズが起こった時に、誰が冷静に、感情に流されずに対処するのかという点です。戦略というのは、冷静に判断できてなんぼですから。

おそらく政府は限られた情報の中で必死に対処するでしょうが、ここで口うるさい評論家たちが時の国民的な感情にまかせて色々と言ってくるのは確実です。外野だけならまだしも、政府の内部にも大騒ぎする人間が、政・官・民を問わず出てくるわけです。

私がとくに恐れるのは、このようなサプライズを前から予言していて、「俺の言った通りじゃないか!俺が正しかったんだ!」というような人物。

彼・彼女こそは「自分の予測が当たった!」という一時の高揚感から、最も感情的になって冷静な判断が下せないような人物になっているにもかかわらず、周りの人間は「この人が正しかった」としてその(感情に流されて間違った可能性の高い)アドバイスを聞いてしまうような事態に陥るからです。

サプライズは起こります。2017年もわれわれは大きく驚かされることになるのは確実です。そして中には予測を当てる人もいるでしょう。

ただし本当の勝負は、そのサプライズが実際に起こってからです。戦略を真剣に考える人間としては、その一時の感情に流されないようにしなければ、冷静な判断ができません。

だからこそ、予測を当てたとする人間には最も警戒すべきなのです。彼らこそが「勝って兜の緒を締めよ」という格言を、その瞬間にこの世で最も必要としている人間なのですから。

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