百年超える舞台に熱気 地歌舞伎、地域に根付く。中津川市

【10-1】(岐阜新聞社、文と写真・松田尚康)引用編集

 地歌舞伎振付師の4代目中村津多七さん(左端)から指導を受け、稽古に励む保存会員たち

 素人の役者が演じる地歌舞伎(じかぶき)(地芝居)は岐阜県内で盛んだ。
全国でも有数の29もの保存会が活動し、半数は県南東部の東濃(とうのう)地域に集中する。
江戸時代、中山道を行き交う人たちがもたらした芝居の文化が根付いた。

長野県と接する中津川市。
100年以上の歴史を持つ明治座、常盤(ときわ)座、蛭子(えびす)座の三つの芝居小屋は現在も使われている。
舞台に立つ役者は地元住民。幕が上がり「待ってました」と大向こうから掛け声が飛び、観客のおひねりがまかれる。
 市内に五つある保存会の一つ「東濃歌舞伎中津川保存会」の会長市川尚樹(いちかわ・なおき)さん(51)は「芝居内容や芝居小屋の雰囲気だけでなく、小屋でご飯を食べることも魅力の一つ」と話す。
 2月、翌月の定期公演に向けて中津川保存会の稽古が毎夜続いていた。4作品を上演し、一つは小中学生による子ども歌舞伎だ。地歌舞伎振付師の4代目中村津多七(なかむら・つたしち)さん(62)=本名・吉田茂美(よしだ・しげみ)=らがせりふの抑揚から所作まで細かく指導し、本番に備える。


 地歌舞伎そのものの知名度の低さがかねて課題だが、岐阜県も振興しようと2010年度から「岐阜自慢ジカブキプロジェクト」を展開。
旅行会社へのPR、オリジナル商品の開発にも力を入れる。
各保存会の露出も増え、来場者が増えてきた手応えを感じ始めている。

 苦労も尽きないが「師匠に叱られ、恥をかいてもやめられないのが地歌舞伎」。
役者同士で、そう話すと市川さんは語る。
生き生きと演じる役者の姿が観客の心を打ち、会場全体はえも言われぬ熱気に包まれる。


  *会員が集うのは公演前の稽古の時くらいだそうだが、稽古場の会員は家族のよう。幅広い世代をつなぐ側面も地歌舞伎にはある。

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