現代芸術、まちの魅力に 別府温泉、市民が仕掛け

【12-3】(大分合同新聞社、文・佐藤章史、写真・杉山和也)引用編集
 昨年の第2回展で廃材を利用したオブジェが設けられ、劇場空間になった楠銀天街

 湯煙が立ち上る温泉都市の大分県別府市を舞台に、3年に1度開かれる現代芸術フェスティバル「混浴温泉世界」。
国際的に活躍するアーティストを招いて、別府オリジナルのアートプロジェクトを展開する市民主導の芸術祭だ。

舞台となるのは、路地裏や商業施設の空きフロア、元ストリップ劇場など。
2009年から始まり、12年の第2回展では、10月から約2カ月間の会期中に全国から12万人以上が訪れた。

仕掛け人のNPO法人「ベップ・プロジェクト」の山出淳也(やまいで・じゅんや)代表理事(42)は「アーティストは別府のまちと向き合って、魅力や課題を示してくれる」と話す。

 別府はかつて浴衣姿の団体客や修学旅行生であふれる一大観光地だったが、旅行形態の変化などによって、1976年をピークに徐々に観光客が減少。
中心商店街の楠銀天街も空き店舗が目立つようになった。
 
そんな楠銀天街に目を付けたダンスチームは、廃材を活用したオブジェを設置し、幻想的な劇場空間に変えてみせた。
連日稽古し、最終日には市民を巻き込んでの公演を開いた。
たばこ店を営む藤沢照子(ふじさわ・てるこ)さん(81)は「全国から人がいっぱい来て楽しかった。
昔のにぎわいが戻ったよう」と思い出を語る。

 会期終了後、まちに残るアート作品もある。
別府温泉発祥の地といわれる浜脇地区の築100年超の長屋を改装し、床にビー玉を敷き詰めてLED(発光ダイオード)で照らした作品は、滞在施設に活用される予定。
地区に残る明治期の古い町並みは、再開発で変わりつつあるが、作品がまちの記憶をとどめる"遺産"となっている。

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