2017/11/13

「祭」は 肉を手にもち、神の机にささげているさま

神を招くための「肉」 。「祭」は  肉を手にもち、神の机にささげているさま
2017/11/12付 nk を抜粋編集  阿辻哲次

 私が育った関西で「肉」といえば牛肉のことで、その証拠に、お好み焼きのメニューには「肉玉」と「豚玉」があり、「肉うどん」には牛肉が載っている。だが「肉」が豚肉を意味する地域もあって、関西でいう「豚まん」は、コンビニの普及によって、いま全国的に「肉まん」と呼ばれている。

 いまの中国語でも「肉」といえば豚肉を指すのが普通だが、しかし過去の中国では豚を含めて、数種類の動物の肉が食卓にのぼっていたようだ。

 現存最古の漢字である「甲骨文字」の中に、動物の肉を切り取った形と考えられる文字があり、これが後に「肉」になるのだが、しかしこの字が他の字の構成要素になる時には《月》と書かれた。天体の「月」とは別字で、「胴」や「肌」の左にあるこの部首を、だから日本では「ニクヅキ」と呼ぶ。

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  +  又→  +  示 =
    肉を手にもち、神の机にささげている所

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 「祭」という漢字はこの《月》(=肉)と《又》(=手)の下に《示》がある形で、
    《示》は空から下りてきた神が、地上にとどまる時によりどころとする小さな机である。つまり「祭」は、手に持った肉を地上に舞い降りた神に捧(ささ)げているさまを表す漢字である。

 古代中国の祭祀(さいし)では薪(まき)で動物の肉を焼き、そのかぐわしい匂いで空から神を招いた。声で呼びかけても大空にいる神さまには届かないので、バーベキューの匂いを空に送って、それで神さまを招いたというわけだ。神様も食いしん坊だったようだが、ここで使われた動物は、牛・豚・羊・犬などであった。おそらく当時の食事でもそんな動物の肉が食べられたのだろう。ただその肉の焼き方や調味料など、具体的な調理方法がまったくわからないのが残念だ。

(漢字学者)

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