2017/10/29

国や行政は地域活性化に手を出すな。今井 照

行政は地域活性化に手を出すな 今井 照 
地方自治総合研究所 主任研究員
2017/10/24 nk を抜粋編集

 「地域活性化」という言葉には魔力がある。誰も反対できないし、重要なテーマであることは間違いない。しかしそれが自治体行政にとって不可欠な使命かと言えば、それはまた別の話だ。

 自治体の使命とはなんだろうか。最も限定的に定義すれば、さまざまなリスクに対して住民の安全と生命を守ることである。もう少し緩く考えれば、そこに住む人たちが今日と同じように明日を暮らせるようにすることだ。

 そう考えれば、人口減少それ自体は自治体にとって恐れるに足りない。あくまでも今いる人たちの生活を豊かにすることが目標だからだ。もし縮小社会に向けて備えるべきことがあるとすれば、古くなった水道管の交換など生活インフラのメンテナンスや次世代を育成する学校教育に資源を集中することだろう。

 だが現実に自治体は、地域活性化競争に放り込まれている。もちろん中には人口が増加している地域もあるので、そこでは一定規模の都市開発も必要になる。ただし、そこで主役となるのは地域の市民や企業であり、そのバックボーンとなるのは地元金融機関であるべきだ。決して地方債などの公的資金ではない。

 かつても地域活性化の名の下に「工業団地の造成」や「リゾートづくり」などが進められた。この結果、各地の自治体財政がどれだけ打撃を受けたかは振り返るまでもない。縮小社会を迎える自治体は、地域活性化の幻想に振り回されずに「余分なことをしない」ことが肝要ではないか。

 しかし、国からは「アイデアを出せ」「人口を増やせ」などさまざまなビーンボールが飛んでくる。計画づくりに職員が忙殺され、悲鳴を上げている自治体も多い。こうして国が用意するメニューに即した地域活性化策が進行する。始めは国の補助金や優遇策によって見かけの負担が少なくても、しだいに積み上がる債務や維持管理コストで自治体の余力がそがれる。さらに行政サービスが見劣りするようになれば、町から出ていく住民が増える。

 こうした悪循環を自治体がやり過ごすには、当面の間、国に対して「面従腹背」で対応するのも一つの方法だ。具体的には自治体財政に負荷がかからないように「やったふり」をすることである。国に対して「面従腹背」でも、今いる住民や地域に正面から向き合えばいい。それが縮小社会において市民生活や地域社会を守ることにつながる
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