タイ前国王火葬式、35万人がお別れ

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タイ前国王火葬式、35万人がお別れ 仲裁役欠きどこへ 貧富の差、なお国家を分断 
2017/10/27

 タイ国民が「国父」に別れを告げる。2016年10月に死去したプミポン前国王の葬儀は29日に終わり、約1年ぶりに喪が明ける。貧富の差などに根ざすタクシン元首相派と反対派の政治対立は解けないが、仲裁役を担った前国王はもういない。国父なき分断国家はどこへ向かうのか。


 新時代を迎えた王室では、前国王長男のワチラロンコン新国王(65)が改革を進める。5月に5組織を国王直轄とし、人事権を握った。7月には世界有数の1.4兆バーツ(約4.8兆円)との試算もある王室財産に関わる法律を約70年ぶりに改定、財産は国王の意思で運用されると明記された。

 法政大学の浅見靖仁教授は「新国王は権限拡張に重きを置いている」とみる。不敬罪が残るタイでは一連の動きはほとんど伝わらず、国民は実質、蚊帳の外だ。

 前国王が地方行脚で集めた国民の絶大な敬愛は、政治騒乱の収拾などで力を発揮する源泉となった。新国王にとって、父の築いた求心力を引き継ぐのは容易ではない。

 タクシン派と反対派の対立は10年以上も続く。タクシン派支持者の多くは農民で、反対派は軍人や富豪など既得権益層と都市部の中産階級だ。

 富の集中は続いており、クレディ・スイスによると、タイでは富豪上位1%が国内総資産の58%を握る。持てる者と持たざる者の対立は根深い。

 現軍事政権は、軍自身が前国王なき後の安定の要だと考えているようだ。軍政プラユット暫定首相の続投シナリオが、早くも話題にのぼる。

 「中所得国のワナ」にもがくタイの成長は滞り気味だ。50年までにフィリピンやベトナムに抜かれるとの予想もある。いずれ総選挙に向け国の針路を巡る論戦が始まる。国を憂えた国父の思いに「子」らはどうこたえるだろう。

(バンコク=小谷洋司)


 在位70年で死去したタイのプミポン前国王の火葬式が26日、首都バンコクで始まった。会場の王宮周辺を黒い服を着た人が埋め尽くすなか、王族らの葬列がゆっくり進んだ。人々は悲嘆に暮れた様子で手を合わせ、前国王との別れを惜しんだ。

 火葬式は王宮前広場につくられた仏教様式の施設で執り行われる。王族、政府高官、世界40カ国以上の国家元首や特使が前国王を追悼する。タイ王室と親密な日本の皇室からは秋篠宮ご夫妻が参列された。

 儀式に先立ち、前国王の長男ワチラロンコン新国王(65)も加わった大規模な葬列が王宮周辺を巡った。気温30度を超える炎天下にもかかわらず、葬列の沿道に入れなかった人も含めると35万人が集まったという。

 葬儀は29日の納骨式で終了する。約1年に及んだ喪は明け、市民生活は正常化する。

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