論理・創造、プログラミングで育む 石戸奈々子
nk 2018/07/25
NPO法人CANVAS理事長
プログラミング教育が2020年度に小学校で必修化される。学校現場からは「指導者がいない」「授業案がない」という不安の声が聞こえてくるが、IT(情報技術)教育で後れをとる日本にとって、プログラミング教育は喫緊の課題だ。諸外国に追いつき追い越すためには、学校だけに押しつけてはいけない。
周囲によい教育資源がない場合も、例えば遠くにいるエンジニアに遠隔授業をしてもらえばいい。交流サイト(SNS)を使い、世界各国の子どもと一緒に作品を作りながら学ぶこともできる。学校外の資源を使いこなせば地域的、経済的格差を乗り越えた教育が実現できる。
カギになるのは地域や産業界との連携だ。私が理事長を務めるNPO法人CANVAS(東京・台東)は産官学連携で、約15年前からデジタル技術を活用した創造的な学びの場をつくってきた。教員は必ずしも詳しい知識を持つ必要はなく、外にある専門的人材や教材といった教育資源を活用し、授業を作り上げるファシリテーターの役割を果たすことが大切だ。
プログラミング教育の意義についても改めて強調しておきたい。「プログラマー育成」だと勘違いされることも多いが、どのような人にも必要な基礎教養であり、プログラミングを学ぶのではなく、プログラミングで学ぶという認識が広まってほしい。
学べるのは論理的・創造的思考方法だ。コンピューターを動かす時は課題を細分化し、順序立て、過不足なく指示をする。実際に自分の手を動かしてコンピューターに指示し、作品を作り上げるといった経験を繰り返すことで、論理的に考えて創造的に物事を進める能力が身につく。
「論理的・創造的思考方法はほかの教科でも身につく」との指摘がある。確かに算数や国語などでも鍛えられる。ただし人工知能(AI)や、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」、ビッグデータの技術が進化し、生活を飛躍的に便利にしているなか、それを制御するコンピューターを教材にしない手はない。
プログラミングを学ぶことで、コンピューターがどのように動いているかを理解し、主体的に活用できるようになる。技術が急速に変化する時代では、学び続ける態度も大切だ。試行錯誤しながら成果を出す体験を小学校からすることで、生涯にわたって必要になる学び方の基礎を身につけることが期待できる。
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