冬の乾燥肌対策、今年は早めに 洗顔しすぎず日焼け止めも
香辛料や酒は控える
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- 2012/11/3付
毎年冬になると肌の乾燥を訴える人は増える。今年はそうしたトラブルを感じる人が、天候不順の影響で初秋から増えているという。本格的な乾燥シーズンを迎える前に、今からできる対策について専門家に聞いた。
「このところ『医療用脱脂綿』を使っている商品についての問い合わせが多い」。フラグスポート(東京都港区)の山根崇裕社長はいう。イタリアの寝具を扱う同社では、医療用脱脂綿を使用したパジャマやシーツを販売していて、消費者の関心が高いという。
■例年より悩み早く
「医療用脱脂綿は、綿花を医療用に脱脂、漂白して成形したいわば医療用具のひとつ。清潔で吸水性が高いことから、肌が敏感になっている人の関心が高まっている」と千春皮フ科クリニック(さいたま市)の渡辺千春院長は分析する。
通常乾燥肌などの皮膚疾患は、汗や紫外線、高温などの影響が大きい夏、また乾燥の厳しくなる冬に増える傾向にある。例年なら秋は一年を通して比較的皮膚の状態が良い季節だ。
「ところが今年は9月末から患者が急増している」と神戸大学医学部付属病院皮膚科でアレルギーなど皮膚疾患が専門の尾藤利憲医師は話す。肌が乾燥してカサカサになりかゆい、かゆみが止まらずイライラする、夜も眠れないといった悩みを抱えて来院する患者が目立っているという。
気象庁によると、9月の東京の平均気温は平年比2.4度高く、10月は0.9度高かった。尾藤医師は「夏から秋にかけて昨年より雨が少なく、気温が高い日が続いたため、乾燥肌が増えているのでは」と見る。
例年にない皮膚疾患の悪化も目立つ。夏の虫刺されによる傷や引っかき傷から局所の感染症が誘発されたり、皮膚の深い場所から皮下脂肪組織にかけて細菌による化膿性の炎症が起きる蜂窩織炎(ほうかしきえん)になったりする場合もある。「通常は寒くなるこの時期に頻繁には見られない」(尾藤医師)という。
このように今年は秋の早い時期から乾燥で悩む人が多く、例年以上に乾燥シーズンが長い。冬の本格的な乾燥シーズンを前に、いまから生活を見直して乾燥対策を始めるのが効果的だ。
常に露出しているのが顔。それだけに特に乾燥しやすい。夏の日焼けによる肌へのダメージが実は乾燥を助長している。十分な保湿ケアが必要だ。
洗浄力の強い洗顔料やオイルクレンジングは避ける。「肌の表面にある角層が傷むとバリア機能が低下して乾燥が進む」(渡辺院長)。さらに、医薬品・基礎化粧品メーカー、全薬工業(東京都文京区)の村本敦比古学術課マネージャーは「洗顔直後は間髪入れずにローションで保湿成分を補給するとよい」と強調する。
体のスキンケアも忘れてはいけない。入浴後は肌から水分が蒸発しやすい。ただ、入浴直後は汗がひかず保湿剤を塗ってもベタつきが残りがち。肌が落ち着く10~15分以内に保湿剤で全身をケアしよう。
肌に密接している衣類や寝具の素材を見直すこともも肌への刺激を軽減することになる。化学繊維などの衣服は「静電気が起きやすいので、乾燥肌の場合、ちくちく感やかゆみを引き起こす」(尾藤医師)。
■ビタミンC、Eを
良質な睡眠のために、パジャマやシーツを見直すのもお勧め。睡眠中は一晩で平均200~400ミリリットルの汗をかく。手足は乾燥してかゆいのに、首やわきの下、ヒジの裏や股間周辺などやわらかい部分は汗で不快という二重のつらさを防ぐには、吸水性があり肌に刺激の少ない天然素材を選ぶ。
体の中からの乾燥対策もある。ビタミンCは皮膚の弾力を保つコラーゲンの生成を助け、シミを作るメラニンの生産を抑える。抗酸化作用のあるビタミンEは老化防止に効果的とされる。こうした食材を普段から意識して摂取しよう。
一方で、香辛料やアルコールのとりすぎは禁物。発汗誘発や血管拡張作用、脱水作用などにより体内の水分を失いやすくなる。肌の乾燥が気になり始めたら控えるのがよいだろう。
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■室内の湿度は適度に保つ
肌のトラブルの一因として、住宅内の環境も見逃せない。「最近の住宅は機密性が高いため、通常はトラブルのない肌でも乾燥対策が必要になる」(尾藤医師)。適度な湿度を保つために加湿器や空気清浄機を活用するなど、湿度の調整を心がけよう。
エアコンのクリーニングも忘れないようにしよう。季節の変わり目は「しばらく使用しない間にエアコン内に発生したカビや、たまったほこりなどが使い始めに噴出して、目の周囲がかゆくなるなどの症状を訴える患者も少なくない」(尾藤医師)という。エアコンのフィルターを取り外し、ほこりを掃除機や使い捨ての歯ブラシなどで除去するとよい。風の吹き出し口に黒かびがあるなど汚れがひどいときは専門業者に頼むのもよいだろう。本格的な冬到来の前に、こうした機器の手入れも肌のトラブル対策として大切だ。
(ライター 結城 未来)