大江健三郎 「北京の青年たち」(『厳粛な綱渡り』 文藝春秋新社 1965)
上述書批判:
一国の青年がそろって明るい目をしている、なんてことがあったら、まず思想統制と疑うべきです。
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北京の青年たちは明るい目をしている、ほんとうに明るい目だ。(略)
そしてぼくが、あらゆる責任をとりながら、中国の社会主義国家は、理想的にうまくいっている、と誓えるのも、副総理(引用者注 陳毅)から博物館の案内係、アヒル飼育人にいたるまで、この自由なユーモアをもって社会や生活にたちむかっているのを、自分で見て感動したからである。(71~72ページ)
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1960年代の社会主義中国がどう「理想的にうまくいって」いたのかは、いずれ具体的な資料を提示します。
確実なのは、以下のあとがきのついた1991年版から、大江が「北京の青年たち」を痕跡も残さずに削除しているということです。
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「文芸文庫」版のための編集は、物理的に分量を少なくするための整理であり、五十代なかばを過ぎた今でも、ぼくはこのエッセイ集の最初の版のすべての文章に責任をとりたいと思う。
(Juin'91)
(大江健三郎 「「文芸文庫」版のためのノート」 『厳粛な綱渡り』 講談社文芸文庫 1991 649ページ)
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