金襴の日傘の出来栄えを確かめる「中村金襴工場」の中村幸弘社長 |
金箔 (きんぱく) を貼った糸を織り込んで文様を描く「 金襴 (きんらん) 」。
繊維産業が盛んな福山市は、京都市や群馬県桐生市と並ぶ金襴の産地だ。
「生地の表と裏で色が違うでしょ。これが金襴の特徴」。
1927年創業の「中村金襴工場」の 中村幸弘 (なかむら・ゆきひろ) 社長(59)が手に取るのは、1月に販売を始めたばかりの金襴日傘。
東京都三鷹市の傘職人とのコラボレーション商品で、表は黒をベースにした金色の模様、裏は白で落ち着いた雰囲気を醸し出す。
価格は1本8万円だ。
金襴は宋代の中国で始まり、日本には鎌倉時代に伝わったとされる。
主に高級生地として僧侶のけさや和服に使われた。
昭和30年代に金襴を作り始めた同社は、独自の動力織機を導入して同業者をリード。
掛け軸に使う金襴では全国シェアの7割を占める。
しかしライフスタイルが変化し、金襴の需要は右肩下がり。
福山市内に十数社あった同業他社はすべて廃業した。
落ち込んだ国内消費を補おうと、2011年にはアラブ首長国連邦のドバイであった商談会に参加。オイルマネーで潤う中東の富裕層向けに売り込んだ。
金襴の技術を応用したホログラム生地のクッションなども投入。
しかし、インド産や中国産の品の装飾に比べて地味との理由で評価は低かった。
結局、中東への売り込みは断念せざるを得なかった。
それだけに、世に出したばかりのコラボ商品への期待は大きい。
中村社長は「日本人には、職人技や伝統を理解できる感性がある。
日傘を復活のシンボルにして金襴製造を続けたい」と力を込める。
*軽くて丈夫。金襴を知らない若者が増える中、地域の伝統産業が力強く復活することを願いたい。
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