NK, 2013/8/13
【摘録】
■在校生430万人
「MOOC(ムーク)」。米国で生まれた大学水準の大規模オンライン教育はこう呼ばれ、英語圏を中心に今急速に広がる。
若井が選んだのは米シリコンバレー企業が始めた「コーセラ」。現在最も大きな無料教育サイトだ。
登録者の数は約430万人。日本の大学・大学院生の1.5倍だ。提供するコースは420あり、試験を課し、合格なら修了証を授与する。正式な学位ではないものの、一定の能力を示す証明書として採用時に考慮する大手企業が最近増えている。配信する側も模索しているのは優秀な学生を企業に紹介、利益を上げる事業モデルだ。
ムークに詳しい京大教授の飯吉透(49)は変化が激しい現代は「人生の必要なときに技能・知識を身に付けられる柔軟な教育システムが必要」と言う。ムークは一つの有力な手段だ。
コーセラの登録者は多くがキャリアアップをめざす社会人や経済的理由などで留学がかなわない人々。シリアのある医師は内戦で家や親類を失いながら25の講義を修了した。パキスタンには米デューク大の天文学の講義で科学に目覚めたという幼い兄妹もいる。
「第2のスティーブ・ジョブズはアフリカの小村にいるかも」。コーセラを創業した一人、スタンフォード大教授のダフニー・コーラーは話す。
大学も積極的だ。コーセラには既に世界の有力大86校が参加する。ムークには別のスタンフォード大教授が創業に参加した「ユダシティー」、米ハーバード大などが設立した「エデックス」もありコーセラと競い合う。
日本では東大が9月からコーセラ、京大が来春からエデックスで講義を配信する。第1弾となる東大特任教授の村山斉(49、素粒子論)のコースには東大の学生数を上回る約3万人が既に履修登録した。
■PR効果大きく
配信プロジェクトに携わる東大准教授の山内祐平は「社会に広く知を届けられる」とムークの登場を歓迎する。PR効果も大きく「留学生を呼び込む手段の一つとして可能性がある」
◇ ◇
ネット上のサービスがさらに「境界線」を揺さぶっている。教育は、政策は、ビジネスはどこまで変わるのだろう。
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