グローバル時代をひらくカンボジア・キリロム工科大学 英語でITを学ぶ
2018/10/31付 NKを抜粋編集
カンボジア地図
カンボジアの首都プノンペンから車で南西に3時間ほど行くと、日本の軽井沢を思わせるリゾート地、キリロムに着く。
日本人起業家の猪塚武氏が学長を務めるキリロム工科大学(KIT)が、ここにある。
猪塚氏がKITを開校したのは2014年。基本的な考えは「英語でIT(情報技術)を学ぶ」だ。カンボジア人を中心に約200人の学生が、インド人教師からソフトウエア開発を、フィリピン人教師から英語を学んでいる。
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育てたいと考える人材像は、グローバル企業の経営者や最高技術責任者(CTO)。そのためにはプログラミングだけでなくマネジメントや会計、さらにはプレゼンテーションなどの教育訓練も重視している。
学費はKITに賛同する企業からの奨学金でまかなわれるため、実質無料。学生は卒業後、奨学金の提供企業に就職する仕組みだ。カンボジアは物価も安く、全寮制であるため、生活費もほとんどかからない。
9月の初め。KIT学生によるビジネスプラン発表会が開かれた。20歳前後の学生が5チームに分かれ、自分たちが考えた事業計画を審査員の前で発表した。ベンチャー経営者が資金を調達するために参加する、「ピッチ」とよばれる説明会によく似ている。
拡張現実(AR)を使ってカンボジアに点在する歴史的遺産を説明するアプリ開発や、就職希望の学生と企業を結びつけるサービス。発表内容は日本で見かけるものと大差ない。大きな違いは審査員への受け答えも含め、すべて英語で行われたことだった。
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学生は授業を通じて英語を学ぶだけでなく、米国のスピーチイベント「TED」をネットなどで見て、英語のプレゼンテーション術を独習しているのだという。
カンボジアは1970年代後半、ポル・ポト政権下での大虐殺という不幸な歴史を持つ。多くの知識層が命を奪われたため、経営者など経済を引っ張る知的なリーダーが圧倒的に不足している。このため経済成長率は高いものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)の最貧国の一つと見られることが多い。
猪塚氏は「カンボジアに求められているのは、グローバルに通用するIT人材の輩出」と語る。世界の企業は居住地や国籍にかかわらず、優秀なIT人材を奪い合う。カンボジア経済の課題は、日本に重なるところも多い。
(アジア総局編集委員 小平龍四郎)
《ビジョン》猪塚武学長 深刻な教師不足 ビジネスで解決
2018/10/31付
覚えている方もいらっしゃると思いますが、1990年代の終わりから2000年代にかけて、日本でデジタルフォレストというIT企業を経営していました。この会社を09年にNTTコミュニケーションズに売却し、シンガポールに移りました。自分を見つめ直し、起業家として出直すためでした。
どこでビジネスをするかアジア域内を見渡し熟考しました。カンボジアは良い選択だったと思います。親日国で外資規制がほとんどありません。素直で地頭の良い若者が多い半面、教師不足は深刻でした。
大学をつくって技術者や知識層を増やせば、社会の問題解決につながり、ビジネスとして回るはずだと考えたのです。ここでITを学ぶ学生は英語の上達も早く、日本からのカンボジア留学が増えることも期待しています。
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