斎藤茂吉『曼珠沙華』。悪魔よけ
2021/09/21は、中秋の名月でした。
曼珠沙華(まんじゅしゃげ)は、別名、彼岸花です。
この赤い花を眺めると、悪魔から離れられると言われています。
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斎藤茂吉『曼珠沙華』 青空文庫
曼珠沙華は、紅い花が群生して、列をなして咲くことが多いので
特に具合の好いものである。
一体この花は、青い葉が無くて、茎のうえにずぼりと
紅い特有の花を付けているので、渋味とかさびとか幽玄とかいう、
一部の日本人の好尚からいうと合わないところがある。
そういう趣味からいうと、蔟生(そうせい)している青い葉の中から、
見えるか見えないくらいにあの紅い花を咲かせたいのであろうが、
あの花はそんなことはせずに、
冬から春にかけて青々としてあった葉を無くしてしまい、
直接法に無遠慮にあの紅い花を咲かせている。
そういう点が私にはいかにも愛らしい。
もったいぶりの完成でなくて、
不得要領(ふとくようりょう)のうちに強い色を映し出しているのは、
むしろ異国的であるということも出来る。
秋の彼岸に近づくと、
日の光が地にしみ込むようにしずかになって来る。
この花はそのころに一番美しい。
彼岸花という名のあるのはそのためである。
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