マレーシア、ムスリム市場の媒介拠点に

マレーシア、ムスリム市場の媒介拠点に 「ルック・イースト」で日系進出の素地

2017/11/30 nk 編集

 日本経済新聞社とマレーシア投資開発庁は30日、クアラルンプールで「マレーシア日経ビジネスフォーラム」を開いた。同国の潜在的な成長力と課題について、日本企業の幹部らが討議した。

 講演したコニカミノルタの浅井真吾常務執行役はマレーシアの優位性について「日本との連携が深く、カイゼンを地道に実施する素地がある。整備されたインフラなど基礎能力が高い」と語った。同社は複合機などでマレーシアの生産比重を高めている。

 続いて講演した三井住友銀行の西崎龍司常務執行役員は「イスラム金融では世界2位の市場。アジアのハブとなり得る」と金融面から見た魅力を語った。一方、2016年12月に導入された貿易取引の外国為替規制にも言及し、「自由な資金移動の保証はアジアの金融センターを目指す上で重要だ」とクギを刺した。

 その後の討論会でマレーシア日本通運の早瀬彰哉社長は「現在の物流のハブはシンガポールだが5年、10年先に対抗できるのはマレーシア」と言及。「政府はハラル物流に力を入れており、各国とムスリム市場をつなぐ拠点になる」と潜在力の高さを指摘した。

 パナソニックマネージメントマレーシアの井水啓之副社長は「研究開発(R&D)やグローバル経営に適した人材が多い。開発・生産・販売面で意思決定権を前線に移すことが重要」と話した。

 一帯一路構想を掲げる中国マネーの存在感が増していることにも話が及んだ。アジア・大洋州三井物産の外処敏彦クアラルンプール支店長は「中国が作った下地にうまく付加価値のあるものを乗せていく方が日本の進出企業にとっても有効だ」と強調した。

 マレーシアに拠点を置く中堅企業の座談会では、料理教室を運営するABCクッキングスタジオワールドワイドの千先拓志ディレクターが「ムスリム、仏教徒、ベジタリアンなど多様な食文化が共存している。多様性を取り入れて成長することができる地域」と話した。

 冒頭に基調講演したナジブ首相は「(日本を見本に経済成長を目指す)ルック・イースト政策をとっていたマレーシアには日系企業が求める人材プールがある」と述べ、日本企業にさらなる投資を促した。

 ムスタパ貿易産業相はフォーラム中に開いた記者会見で、米国抜きの11カ国で大筋合意した環太平洋経済連携協定(TPP)について「マレーシアが信頼できる投資パートナーとしての評価を確立する上で重要な協定だ」と話した。

(クアラルンプール=岸本まりみ)

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