2008/02/28

田中一村(いっそん)。奄美を描き続けた孤高の画家。Tanaka Isson。9月11日没

田中一村(いっそん)。奄美を描き続けた画家。Tanaka Isson。9月11日没
田中一村。田中一村記念館にて。/奄美パーク

・1908年7月22日。栃木県~1977年9月11日没。69歳。奄美大島


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【地図】  奄美・沖縄4地域  世界自然遺産に
奄美・沖縄4地域 世界自然遺産 

奄美沖縄自然遺産 

2021年7月に、世界遺産委員会によって、
「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島(いりおもてじま)(奄美・沖縄)」が、
きわめて貴重な生物や生態系を有しており、
世界自然遺産として
相応しい地域であることが認められます。


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大島ツムギのドロ染め。背後には一村の家 

ドロ染めは、田中一村もおこないます。
日を変えて5回染めます。
回数が多ければ多いほど、光沢が出ます。
この作業の前に、車輪梅(テーチギ=鉄木)に80回ほど 染めます。
向こうに見えるのは一村宅です。

一村は、この掘っ立て小屋に引っ越して来て
「大きくて、まるで、御殿のようだ」と喜びます。

名作「アダンの木」 

一村は、人気(ひとけ)のない縦長の絵を好んでえがきます。
大きな横がきの絵は、狭い4畳半の家では描けません。

(画像の出典:『奄美群島日本復帰50周年記念 奄美を描いた画家 田中一村展』2004年)

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田中一村(いっそん)は、 1908年栃木市に生まれます。
7歳で文部大臣賞を受賞し、
18歳の時には、重鎮から激励されるなど、
将来を嘱望(しょくぼう)されます。
しかし、中央画壇とは一線を画し、清貧の中で画業に励みます。

1958年50歳の時、奄美に移ります。
それから約20年間
ツムギ染色工をしながら、
不遇の中で、奄美の自然をえがきつづけます。


植物や花鳥を画面いっぱいに細密にえがき、
デフォルメした幽玄な作風で、
独自の日本画の世界を生み出します。


2003年、一村の作品が教科書に採用されます。

一村は、アダン(後述)をこのんでモチーフにします。

アダンは、パイナップルのような大きな果実を実らせます。
常緑のままで、真冬でも色鮮やかな花を咲かせます。

波打ち際に群生し、
貴重な防風、防潮、防砂林ともなっています。

一村は、樹木を通して海の彼方を見るのが好きです。

奄美の山は濃く、また雲をよぶので、
海や空もたそがれた感じになっています。
山高く緑豊かなところの特徴的な風景です。


【名言】

(世評)「田中一村は、日本のゴーギャン」

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2008/03/02


田中一村の好んだ奄美の風景
ヒカゲヘゴ(日陰ヘゴ)

ヒカゲヘゴは、他の植物のために、
日陰をつくるので日陰ヘゴといいます。

ヘゴは、ワラビなどと共にシダの一種です。
新芽を食べることができます。

        /名瀬市の金作原(きんさくばる)原生林にて。

ここは、映画ゴジラの舞台ともなりました。

奄美は山深く、緑濃く、森林はうっそうとしています。
大きな雲が上をおおっています。
    一村宅のパパイヤ
熱帯のシンガポール、マレーシアの平均気温は27度です。ジャングルの蒸気が雲になるからか、いつも曇っています。
    奄美も似通ったところがあります。一村がこのんだ
濃い沈んだ風景がいたるところにあります。

青い実を漬け物にしたり、みそ汁の具にしたりします。
夏は暑すぎて野菜が育たないので、パパイヤやゴーヤ(にがうり)を野菜の代わりにします。


一村は農作業が得意でした。
    一村宅のクワズイモ(食わず芋)
 芋は食べられないのでその名が付いています。

一村の宅上の林

山深く、緑濃い奄美の林はジャングルのようにうっそうとしています。

    アダンの群生林
波をかぶってもアダンは枯れません。
コンクリート堤がないところでは、土砂が海に流れでないようにまもります。
台風で運ばれた海の砂
塩害に耐えれる作物だけが海岸に生き残ることができます。

100メートル以上離れていても海の砂は波に乗って舞ってきます。
マングローブの原生林
この木々の下をカヌーで遊ぶことができます。
マングローブ(mangrove)とは木の名前ではありません。
湿地帯に生えているいろいろな樹木群の総称
です。
        /奄美の住用(すみよう)村にて。
止めどなくのびる木のツル
ウジルカンダというマメ科の木です。
ずっと画面の先までのびています。

この付近には、「もだま(藻玉)」というさやの長さが1メートル以上、マメの直径が10センチにもなる世界最大の豆がありました。
この他の植物:
*ビロウ樹 :シュロに似たヤシ
*フクギ 塩害に強い木。空に突き上げるように高く、真っ直ぐにのびます。


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「アダンの木」の3分割法    2008年3月。奄美大島にて

田中一村(いっそん)は、アダンをこのんでモチーフにします。
アダンは、パイナップルのような大きな果実を実らせます。
常緑のままで真冬でも色鮮やかな花を咲かせます。
波打ち際に群生します。
防風、防潮、防砂林として貴重な存在です。

一村は、樹木を通して海の彼方を見るのが好きです。
奄美の山は濃く、また雲をよぶので、
海や空もたそがれた感じになっています。
山高く、緑豊かなところの特徴的な風景です。

名作「アダンの木」は見事な3分割法によっています。
3分割法とは、
「井」の字に
画面を分割します。
交点に強調したい被写体をすえます。

上の絵では、アダンの実にフォーカスをぴったりあてています。

3分割法は、黄金分割とも よばれる撮影技術です。
すでに一村は独学で無意識にマスターします。



琳派風(尾形光琳。「風神雷神図屏風」)のデザインも取り入れています。


一村は孤高のカメラマンでもありました。
カメラの逆光も取り入れています。