- 環境破戒、資源不足、貧富格差、地域戦争で文明が変質し、地球のうめき声が聞こえます。
文明論がかまびすしいのは地球全体の危機感のあらわれです。
工業社会の時代には、規格大量生産による豊富な物財がしあわせの象徴でした。
しかし1980年代から、しあわせは、物財ではなく、心の満足にあると認識されるようになりました。
非現実的な小説、オカルトに引きつけられるのも脱工業社会の特徴です。
- 市場原理主義を掲げ、金融とITの合体で、濡れ手に粟の儲かるシステムをつくりあげたアメリカ方式の繁栄も終焉を迎えつつあります。
ヒト、モノ、カネがアメリカから逃げ出し始め、世界はアメリカの一極支配から多極構造へ進もうとしています。
西欧文明はといえば、イスラム文明との宿命的な対決から逃れることができません。
後世は今を最悪の時代であったと烙印を押すでしょう。
- 世界には、ハンチントンによれば、西欧文明、日本文明、中国文明、インド文明、イスラム文明、ロシア文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明の8文明があります。
この中で近代世界をつくりあげたのは、西欧文明と日本文明です。(アメリカは西欧文明の子です。)
- 日本は、中国文明を、さらにインド文明を取り入れ、西欧文明を加工して日本文明を築きました。
- いま日本は、アメリカや諸外国からインプットばかりするのではなく、日本文明を外へ発信するときです。
西欧文明とイスラム文明の宿命的対決をとく鍵は、相手も自分も正しいとするやわらかい日本文明にあるとの自覚が必要です。
集団主義や終身雇用のよさも喧伝すべきです。
21世紀は国際協調の時代です。
世界が小さく、速くなるにつれ、ますます協調、やわらかさが重要となってきています。
- グローバリゼーションが行き過ぎています。市場原理主義(損か得か主義)が、地域、家庭も崩壊に追いやっています。
グローバリゼーションにハーモニゼーション(協調主義)を加えて、ギスギス社会をしっとり社会にしたいものです。
世界は「もっと貧しく、もっとゆっくり、そしてもっともっと心豊かに」なりたがっています。
【注】
「もっと貧しく」とは、マネーゲームに走る企業をさします。穀物、石油価格の高騰を見てもわかるように、一部のものが富めば富むほど、他の大多数が貧しくなってきています。
(「編集後記」『東京国際大学人間社会学部論叢』第13号の拙稿を改稿)
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