アメリカの格差問題は人種問題から:クルーグマン

  • 1994年、クルーグマンは、アジア通貨危機を予告しました。1997年、アジア通貨危機が起こりました。
  • 2003年『嘘つき大統領のデタラメ経済(The Great Unraveling= 壮大な破たん)』で、ブッ シュ政権の露骨なウソを暴きました。
    この本は、ニューヨークタイムズの人気連載をまとめたものです。
    • イラク侵攻はもともと「テロへの報復」が口実でした。
    • しかし、テロ組織がイラクとなんの関係もないとわかると、「大量破壊兵器を隠しもつ国への制裁」となりました。
    • 大量破壊兵器は見つからず、「中東民主化のための戦争だ」とこじつけました。
    • ブッシュ政権は、自分たちと関連企業の利益のために、最初からイラク攻撃を計画していました。
      そこへ、おあつらえの9.11が起こりました。テロの惨劇と愛国心の高揚を、自分たちのために利用しました。
    • イラク戦争ばかりでなく、経済、社会、福祉、環境、国内の安全保障などに関しても自分たちに都合のよいように国民をだまし続けました。
  • 2007年出版の『格差はつくられた(The Conscience of a Liberal= あるリベラル人の良心)』の中では、クルーグマンは、「いまのアメリカの格差問題は人種差別問題にある」とずばり言い切っています。
    • ニューディール政策と第二次世界大戦の戦時統制の影響で、戦後のアメリカ社会は、貧富の差が少ない社会を築くことができました。
    • しかし、1980年レーガン大統領の登場から政治は一部富裕層が牛耳るようになり、平等な中流社会を壊して格差をどんどん拡大させるようになりました。(経済学的にはフリードマンの新自由主義を取り入れました。)
    • 格差を政策的に作るために、「黒人解放への白人層の不満」と「共産主義に対する被害妄想」をあおりました。
    • 国民皆保険= 
      貧しい人々もカバーする保険= 
      黒人の大多数が加入できる保険、= 
      恩恵を受けるのは黒人で払うのは白人、
      という構図で反黒人意識を利用し、先進国で唯一皆保険のない国に仕立て上げました。
    • 貧しい黒人やヒスパニックなどの移民が政治的に力を持たないよう、共和党右派は、選挙権を与えないように画策しました。
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    • 【格差の経緯】
    • 19世紀後半~1920年代:一部の金持ちに富が集中。
      • トップ1%の年収が、全国民の収入の17%を占めました。最高所得税率は24%で、金持ちも大して税金を払わずに済みました。
    • 1930年代から1950年代:ニューディール政策により貧富の格差が縮小し、大量のミドルクラス誕生。
      • 富裕層の最高税率は77%にまであがります。
    • 1960年代から1970年代半ば:黄金時代
      • 大量のミドルクラスの誕生により、アメリカ経済はおおいうるおいます。
      • 一方、1925年には32人いたビリオネアは、1968年には13人に減りました。
    • 1970年代~現在:金持ち側保護、人種差別的な、福祉嫌悪の時代
      • 1980年就任のレーガン以降、共和党=超保守、民主党=超リベラルへと 分化しました。
      • レーガンは、社会保険を「社会主義」と呼びました。環境保護予算もカットしました。
    • クルーグマンの結論:
      「組合運動を擁護し、最高税率を引き上げ、福祉を手厚くし、特に国民皆保険を実行すべし」
  • アメリカでは白人の人口が減少しています。
    多くの白人の意識が、人種差別的でなくなってきています。
    白人と黒人の結婚を、「認める」が1978年には36%でしたが、2007年に77%にあがっています。
  • クルーグマンは、 アメリカ社会は格差が縮小し、アメリカの長い暗い時代は変わろうとしている、と予言しています。
  • クルーグマンは、2008年ノーベル経済学賞を受賞しました。