バンダイが自社工場、17年ぶりフィリピンに 中国集中を回避
- 2012/7/31 1:21
- 日本経済新聞 電子版
- 1010文字
【マニラ=佐竹実】バンダイはフィリピンに国内外を含め17年ぶりとなる自社工場を建設する。投資額は14億円で、2013年夏をめどにカプセル玩具などの生産を始める。主力生産拠点の中国で人件費が高騰しており、同国に集中した生産体制を改めコストを削減する。フィリピンでは政情の安定などを背景に、日本企業による生産拠点建設が相次いでいる。
バンダイが新工場を建設するのは、マニラから車で1時間ほどのバタンガス州の工業団地。当初は5ラインで、射出成型機20~30台、200の塗装ブースを設ける。200~300円程度で販売するカプセル玩具や、米国向けフィギュア(600~1000円程度)などを生産する。
同社の海外生産比率は現在約8割で、このうち96%を中国の協力工場に生産委託している。新工場の稼働後は中国での生産比率を90%程度に引き下げる。中国では急速な経済発展で人件費が高騰しており、フィリピンへの生産移転により3年間で13億円のコスト削減効果を見込む。
バンダイが自社工場を新設するのは、1996年の中国・石家荘(現在は撤退)以来で、国内も含めて17年ぶり。新工場に先端的な設備を導入し、生産の効率化を進める。将来的な同国での人件費高騰も念頭に、効率化などの取り組みを自由にできない委託生産でなく、自社工場でコスト管理や品質向上のノウハウを蓄積する。
他の大手企業では、スマートフォン(高機能携帯電話)に使う積層セラミックコンデンサー最大手の村田製作所などがフィリピンに生産拠点を設けている。同社は来年1月の稼働を目指し拠点を建設中で、23万平方メートルの敷地に今後さらに3つの工場を建て、同社の海外の生産拠点としては最大規模となる見通し。
キヤノンはプリンター工場を、ブラザー工業はインクカートリッジ工場を来年4月にそれぞれ稼働する。昨年のタイの洪水を受け、日本電産はハードディスク駆動装置(HDD)用モーターの生産の一部をタイからフィリピンに移す。
フィリピンでは10年にアキノ政権が発足して以来、政治が比較的安定している。外資誘致を担当する比経済区庁(PEZA)が税制優遇策を取っていることも奏功。11年の直接投資額は約2500億ペソ(約5000億円)と、09年の2倍近くに増えた。日本貿易振興機構(JETRO)も中国やタイなどに生産拠点を持つ企業を対象にしたセミナーを11月に開き、フィリピンへの投資を呼びかける。