鉄道遺産がワイン貯蔵庫に 甲州市
【 17-3 】(山梨日日新聞社、文と写真・長田和之)引用編集 「勝沼フットパスの会」のメンバーの案内でトンネル内のワインカーブを見る観光客ら 東京方面からJR中央線に乗り山間地を抜けて甲府盆地に入ると、眼下にブドウ畑が広がる。 山梨県甲州市の勝沼地区は全国有数のブドウ産地で、日本のワイン産業発祥の地でもある。 観光ブドウ園の先駆けとなった「宮光園(みやこうえん)」や、現存する日本最古の木造ワイン醸造所(現シャトー・メルシャンワイン資料館)など、数多くの近代産業遺産が残る。 中でも異彩を放つのが、JR中央線の旧トンネル2本を活用したワイン貯蔵庫「勝沼トンネルワインカーブ」と「大日影(おおひかげ)トンネル遊歩道」。 ワインカーブは約100万本のワインを貯蔵でき、市内のメーカーのほか、個人コレクターにも開放。 明治時代から勝沼と首都圏を結び、ブドウ産地の形成に貢献した鉄道文化の遺産が貯蔵庫としてよみがえる。 ブドウとワインのまちの魅力を発信しようと、2006年12月に発足した「勝沼フットパスの会」は、これらの近代産業遺産を地域巡りのツアーのルートに加えている。 ツアーは毎月第1日曜日に開催。 数人のグループから受け付け「全員が満足してくれるおもてなしを心掛けている。 ブドウ、ワイン産地の歩みに触れることができ、参加者から好評です」と小沢正光(おざわ・まさみつ)会長(61)は言う。 「先人たちが残してくれた宝を守り、伝えていくことで、自分たちもこのまちにもっと愛着が生まれる。 そんな活動にしていきたい」。 小沢さんの思いは広がる。 今から100年以上前、醸造技術を学ぶために本場フランスに派遣されたのが、土屋龍憲(つちや・りゅうけん)と高野正誠(たかの・まさなり)。 ワイン造りを通じて2人の若者が描いた地域発展の願いは、現代にしっかりと引き継がれている。