工業地帯を観光クルージング 兵庫県尼崎市
【 5-2 】(神戸新聞社、文・加藤正文、写真・立川洋一郎)引用編集 開催されたナイトクルーズ。工業地帯の風景がムードを醸し出す=兵庫県尼崎市。2012 工業地帯を縦横に走る運河に船が進む。 工場、タンク、高速道路―。 次々と広がる景色に歓声が上がる。 恒例の「運河クルージング」だ。 企画・運営の中心は「尼崎南部再生研究室」。 公害で傷んだ地域の再生をと2001年、学生や会社員、大学教授、市職員らで結成。 「街に軸足を置く」をモットーに、「地ソース」や銭湯、「尼イモ」など「知られざる地域資源」を求めてきた。 「鉄」のまちと言われ、工業が盛んだった兵庫県尼崎市。 戦後は高度経済成長を支える「工都(こうと)」として栄え、多くの企業が集積した。 だが、臨海部を中心とする火力発電や重化学工業に加え、基幹道路の排ガスは深刻な大気汚染を引き起こした。 それでも「公害、人口減、衰退...。そんなイメージを覆す魅力が尼崎にある」と研究員の綱本武雄さん(36)=尼崎市。 水上からは、臨海部の変容が見て取れる。 苦境にあるパナソニックのプラズマパネル工場、荷揚げや積み出しのために船が着岸する岸壁、パナマ運河方式の閘門(こうもん)もある。 陸からの景色とは異なる開放感が、最大の魅力だ。 「この工場で作っているのは―」。 ガイドの説明がものづくりへの興味をかきたてる。 近年、秋のクルーズはNPO法人や企業、行政などが行う「尼崎運河博覧会」に組み込まれ、すっかり定着した。 尼崎公害訴訟が和解して11年。今も自動車の排ガス汚染は続き、クボタ旧神崎工場周辺のアスベスト(石綿)公害も深刻だ。公害問題の解決の先にあるのは、地域の再生だろう。人が住まい、交流する。足元の資源を掘り起こし、どう生かすか。マイナスをプラスに変える試みは今後も続く。(神戸新聞社、文・加藤正文、写真・立川洋一郎) 【神戸新聞】 参加新聞社 もうひとおし 逸品を発掘、販売も 兵庫は産業観光の宝庫。見学できる施設は250カ所以上と、近畿でトップクラス。尼崎市では隠れた逸品を発掘するコンペが行われ、販売する店舗もある。問い合わせは「MiAステーション」電話06(6412)2086=木曜休日。(神戸新聞社・加藤正文)