新興・中小企業
農業法人、アジアで生産 中間層の広がり視野
新鮮組、タイからコメ輸出 イノプレックス、インド合弁を仲介
農業生産法人などがアジアでの生産に力を入れている。稲作を中心に手がける新鮮組(愛知県田原市、岡本重明社長)はタイでビール大手と8千ヘクタールの水田でコシヒカリを生産し、世界に輸出する。新興国でも経済成長で中間層が増え、日本の良質な食への関心が高まっている。国内需要減少や環太平洋経済連携協定(TPP)も視野に入れながら海外に活路を探る。
新鮮組はシンハー・コーポレーションと組み、タイ北部チェンライで生産する。シンハー側が年内に生産会社を設立し、岡本氏が役員として技術指導する。新鮮組はその見返りに新会社の株式を一部受け取る。16ヘクタールの水田で試験栽培し、今年5月に35トンを収穫した。3~5年後に耕作面積を8千ヘクタールに拡大する。
収穫後の乾燥作業に気を配りコメの風味を生かす。日本産並みの評価を得た。60キログラム1万円と現地で生産されるジャポニカ米(短粒種)の約2倍の価格で卸販売する。
台湾の流通企業などから引き合いがあり、アジアや欧米の日本料理店向けに輸出する。日本から中国にコメを輸出するには指定施設で精米するなどの条件がある。コメ輸出国のタイはこうした足かせがない。
岡本社長は「海外で事業を拡大する」とし、3年後には年商を約2倍の3億円まで引き上げる考えだ。
イチゴ生産の秀農業(愛知県一宮市、加藤秀明社長)は中国上海市内でイチゴ栽培を手がけている。選別でイチゴの粒をそろえたり、病気の対応を徹底したりと日本の生産管理を導入して質を高めた。日系の製パン会社や日本人駐在員向けに中国産の2~3倍の価格で販売している。
こうした海外進出を支援する動きもある。農業分野の市場調査を手がける特定非営利活動法人(NPO法人)のイノプレックス(東京・渋谷、藤本真狩代表理事)は、農業生産法人のインド進出を後押しする。
第1弾として同国の農業ベンチャーのHGTIPL社(バンガロール市)と日本企業を橋渡しする。来年4月に合弁会社を設立してイチゴやレタスの生産を始める事業プランだ。今月末に現地視察ツアーを開催する。
温室は面積2万~3万平方メートル、投資金額1億~1億5000万円と想定する。同国南部の産業都市バンガロールは高地で気候が農業に適しており、外資の農地取得・利用に関する規制も緩い。
HGTIPL社は千葉県内の農家のイチゴ栽培技術を導入し、4千平方メートルの温室で年間20トン生産している。無農薬栽培や安定供給が評価され、現地スーパーでは1パック(250グラム)90円で売られている。
インドでは「経済成長に伴い欧米の生活スタイルが浸透し、週に1回程度イチゴを買う中間層も増えている」(藤本氏)という。今後も需要増加が期待でき、合弁参画を呼びかける。
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